研究課題
個体レベルで骨格組織発生を研究するにあたり、遺伝子改変マウスの作成は必要不可欠な手段となりつつ有るが、TGF-betaシグナリングに関しては、シグナル伝達経路のどの分子を標的にするかで、表現系が異なることが報告されている。その理由の一つとして、TGF-betaシグナリングが、複数のリガンドを使用し、細胞内シグナル伝達においては複数の下流伝達経路を用いることに起因すると考えられる。そこで、本研究代表者は、TGF-betaシグナリングが、受容体を経由することに着目し、I型受容体ALK5の遺伝子改変マウスを作成し、骨格組織発生および骨代謝における役割の解明を目的とした研究を開始した。本年度は、昨年度に引き続き未分化間葉系細胞特異的ALK5ノックアウトマウス(Dermo1-ALK5CKO)の解析を行った。これまでに、胎生18.5日の胎児を用いた解析では、Dermo1-ALK5CKOの一次骨化中心に、石灰化した骨梁の中に石灰化した軟骨組織が残存していた。組織票本を用いた骨形態計測では、Dermo1-ALK5CKOの石灰化した軟骨量は、コントロールと比較して有意に残存している一方で、破骨細胞は変異マウスで有意に減少していることが明らかにしたため、破骨細胞が減少しているメカニズム解明のための解析を行った。脾臓よりマクロファージを採取し、破骨細胞への分化を誘導したところ、コントロールおよび変異マウスともに、TRAP陽性多核巨細胞へと分化したことから、破骨細胞数の減少は、破骨細胞前駆細胞の減少によるものではないと推測された。単球細胞から破骨細胞への分化には、RANK-RANKLの相互作用が必要不可欠であるが、免疫染色の結果、Dermo1-ALK5CKO胎児骨芽細胞におけるRANKL発現が低下していることが判明した。以上から、TGF-betaシグナリングは、骨芽細胞分化を制御し、RANKLの発現を介して、破骨細胞の分化を誘導していることが明らかとなった。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件)
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