研究課題/領域番号 |
24791575
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター(研究所) |
研究代表者 |
笹川 覚 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター(研究所), その他部局等, 研究員 (80345115)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 幹細胞性 / 転移能 / Twist1 |
研究概要 |
骨軟部腫瘍は若年齢層における腫瘍発生の10%前後を占め、転移するケースも多く予後が悪いケースが少なくない。近年、Synovial Sarcomaなどで幹細胞性を持つことが示されており、腫瘍の悪性化との関係が疑われている。本研究では骨軟部腫瘍における細胞運動能、幹細胞維持、アポトーシス耐性等を調節する因子を見出すため遺伝子発現スクリーニングを行った。その結果、複数の候補遺伝子が見出され、その中でも発現パターンがほぼAll-or-None様で細胞運動、幹細胞性、アポトーシス耐性の全てに関わる因子としてTwist1を最重要因子として特定した。 本研究では特に幹細胞性の高いSynovial sarcoma細胞株であるYamato-SS(転移巣由来)とAska-SS(原発巣由来)およびOsteosarcoma細胞株であるDunn(非転移性、LM8の親株)およびLM8(高肺転移能)を用いてスクリーニングを実施した。このうち、転移能を有するYamato-SS細胞株とLM8細胞株に強く検出され、転移能が認められないAska-SS細胞株とDunn細胞株にはほとんど検出されなかった。これらの細胞の形態を詳細に観察すると、転移能を持つ細胞株はどちらも細胞表面にInvadopodiaと推測される針状突起が多く見られた。 現在、骨軟部腫瘍におけるTwist1の幹細胞性、細胞運動、アポトーシス耐性能への寄与を確認するため、誘導型のTwsit1強制発現株およびTwist1ノックダウン細胞株の作出を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね、研究計画通りに研究は実施されている。
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今後の研究の推進方策 |
1年目の研究成果から転移能とTwist1の強い関連性が示された。本年度は現在作出しているSynovial SarcomaとOsteosarcoma細胞株の誘導型のTwist1強制発現株およびTwist1ノックダウン細胞株を用いて解析を行う。特に、Synovial Sarcomaについては幹細胞性の強弱と細胞運動性について、Osteosarcomaについては細胞運動性とマウスモデルを用いた肺転移能への寄与について、集中的に解析を進める。 一方、これまで上皮性腫瘍で報告されている知見から、骨軟部腫瘍(Sarcoma)においてもTwist1に着目することは妥当であると考えられるが、Sarcomaは上皮性腫瘍と異なりEpitherial-to-Mecenchymal transitionを起こすまでもなく間葉系の性質を持っている。従ってSarcomaにおけるTwist1の発現制御を理解することがSarcomaの増殖抑制や転移抑制への近道となる。Twist1の発現が細胞株ごとにAll-or-None様を呈することからEpigeneticな制御が根本的な部分にあると推測され、様々な刺激因子でTwist1の発現は強化されたり抑制されたりすることから、細胞を取り巻く環境に応答してTwist1発現はファインニューニングされていると推測される。これらTwist1の発現に関わる制御メカニズムについて詳細に解析を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究成果発表:国際学会(Connective Tissue Oncology Society 18th annual meeting in NewYork、米国)、日本癌学会(横浜市)、日本がん転移学会(松本市)で成果発表を予定しており、これらにかかる費用として30万円 実験:試薬およびプラスチックウェア等の消耗品にかかる費用として75万円 その他:実験参考書等の書籍代として5万円
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