研究課題
骨軟部腫瘍は高頻度に肺を始めとする遠隔臓器に転移を生じ、予後不良となるケースが少なくない。骨軟部腫瘍治療おいては、有効な化学療法薬剤は数が少なく、新規薬剤の開発、特に転移抑制に有効な薬剤が強く望まれている。本研究では、骨軟部腫瘍の幹細胞性と転移能に着目して細胞の特性とその背後にある分子メカニズムの関連を導き出し、それに基づいて腫瘍抑制、転移抑制のための分子標的を探り、エビデンスを担保した抗転移薬剤を探索することを目的としている。実験系としてマウス骨肉腫細胞株のDunn(非転移株)およびそこから選択されたLM8(高肺転移株)、ヒト滑膜肉腫細胞株のAska-SS(低転移患者由来株)およびYamato-SS(高転移患者由来株)を用いて分子スクリーニングを行った。その結果、骨軟部腫瘍の転移能と細胞性状や機能と一致し、幹細胞性維持や骨・軟骨分化を司る分子としてTwist1を見出した。LM8細胞に対してsiRNAでTwist1を恒常的に発現抑制した細胞は肺への転移能が減少した。LM8におけるTwist1の発現を抑制する薬剤としてHDAC阻害剤(NaBu、SAHA)、mTOR阻害剤(Rapamycin)、BMPを同定し、このうちSAHAの投与は動物実験で有意に肺転移が減少した。一方、BMP以外の薬剤はYamato-SSのTwist1の発現を抑制しなかったことから、Twist1の発現制御には複数の経路があると推測された。興味深いことに、Twist1の発現しているLM8、Yamato-SSではNK細胞による免疫作用に重要なFas、ULBPs、MICA/BがmRNAレベルで強く抑制されていることを見出した。Aska-SSにTwist1を強制発現したところ、MICA/Bの発現が顕著に抑制された。このことから、Twist1は免疫監視機構を回避することでも転移能に寄与していることが強く示唆された。
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