麻酔薬は集中治療室で長期投与されるケースも多いが、患者にとって本当に安全だろうか?本研究では、薬の血中濃度を一定に保つことのできる最新の徐放化技術を応用し、麻酔薬が中枢神経に及ぼす形態学的影響に加え、機能への影響について検討する。さらに、麻酔薬の主なターゲットであるGABA 受容体に関連して、細胞内塩素イオン濃度が変化した遺伝子改変動物で薬の作用がどのように変化するのかを明らかにする。本研究により、乳幼児に対して安全に利用できる麻酔薬に関する重要な知見が得られるほか、徐放剤の臨床応用も視野に入れている。 今年度は、血中濃度を安定して保つことのできる麻酔薬の徐放製剤の開発に着手した。我々は実験中の薬の血中濃度の変動を極力小さくすることで、麻酔薬が呼吸・循環に与える影響を最小化できると考えている。そこで、①腹腔内あるいは皮下に単回投与するだけで血中濃度を1 週間保てる製剤を開発すること、②作用時間が数時間から数日間に渡る様々な徐放特性を持った徐放粒子を作成し、目的別に単回投与で至適な作用時間が得られる薬剤を開発することを目指した。具体的には、ポリ乳酸とポリグリコール酸を使用し、その配合比率や各々の分子量を変化させることで麻酔薬プロポフォールを徐放化することのできる薬剤の開発である。現在のところ、様々な薬剤を作成してインビトロにおける徐放試験を繰り返し行っているが、期待するような結果は得られていない。
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