研究課題/領域番号 |
24791585
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
竹村 佳記 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (70624922)
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キーワード | fMRI / 炎症性痛 / 神経障害性痛 / pain matrix領域 / 術後慢性痛 / 吸入麻酔 |
研究概要 |
周術期における痛みの管理は麻酔科医にとって重要な仕事の一つであることは言うまでもない。そうしたプロセスを軽視すると、開胸術後疼痛症候群などの術後慢性痛に移行し、実際のペインクリニックの現場では多くの患者が慢性痛に悩んでいる。そこで我々はfMRIを用いて、吸入麻酔下において痛み刺激による脳活動の変化が誘導されるかについて検討した。 C57BL/6J系雄性マウスに起炎物質である完全フロインドアジュバント(以下CFA)を投与することで炎症性痛モデルマウスを作製し、fMRIを用いてCFAの投与により誘発される脳活動の変化を観察した(各群6-8匹ずつ使用)。fMRIの測定は0.5-1%イソフルラン麻酔下で行った。いずれもtwo-way ANOVAと、その後のBonferroni testで統計処理を行った。 CFAの投与直後より、麻酔下においても視床内側領域や視床外側領域、さらにはそれぞれの上位に位置する前帯状回領域や第一次体性感覚野領域、すなわちpain matrix領域における脳内活性が対照群と比較し、有意に上昇した (p<0.05)。また、この脳内活性は、COX-2選択的阻害薬であるメロキシカムにより抑制された。 以上より、たとえ吸入麻酔下であっても、痛み刺激によりpain matrix領域への痛覚伝達の増強が引き起こされることが明らかとなった。すなわち、麻酔下であっても、痛みは脳内に記憶されうる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度に考えていた「fMRIを用いて全身麻酔下における手術中に生じる急性痛の有無ならびにその際の疼痛発現機構を検討する」内容の一部については、今回検討できている。しかし、本年度は研究機関である星薬科大学へ行く機会は増えたもののまだ時間的に不十分であるため、本研究の達成度がやや遅れている。しかし、前年度よりは進行しており、今後fMRIを使った疼痛発現機構の解明はさらに進むと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、違うモデルを用いることで異なる痛みによる脳での疼痛発現機構の違いなどについてfMRIを用いて検討する予定である。 また、「fMRIを用いて全身麻酔下における手術中に生じる急性痛の有無ならびにその際の疼痛発現機構を検討する」内容に関しては継続して検討する。現段階では、神経障害性痛モデルを通して検討することを考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、研究機関である星薬科大学へ行く回数が予定よりも少なかったため、旅費が残ったと思われる。そのために次年度使用額が生じている。 消耗品費で360千円(実験用動物 100千円、薬品 260千円)、旅費で650千円(資料収集旅費 300千円、研究打ち合わせ旅費 350千円)、その他で550千円(論文投稿費 300千円、印刷費 150千円、複写費 100千円)
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