細胞外記録により骨髄内刺激(バルーン拡張、骨髄吸引)に応答する脊髄後角ニューロンの存在が明らかとなった。骨髄内刺激に応答するニューロンは、侵害刺激に応答するwide-dynamic range ニューロンもしくはhigh-thresholdニューロンでありその多くが皮膚にも受容野を持つことが明らかとなった。また、骨髄内刺激に応答するlow-thresholdニューロンは今回の実験では記録されず、骨髄内の神経は侵害刺激を特異的に伝達している可能性が示唆された。骨髄刺激に応答する脊髄後角ニューロンはモルヒネを脊髄投与することで刺激に対する反応が低下し、ナロキソンを投与することで反応が戻ることが明らかとなった。このことからも、骨髄内の神経が侵害刺激を受容し脊髄後角に伝達していることがわかった。 大腿骨内にバルーンを留置したモデルラットを作成し、骨髄内刺激に対する行動薬理学的評価を行った。骨髄内でバルーンを拡張すると、痛み行動(guarding)をとり、電気生理学的研究で得られた皮膚受容野で痛覚過敏が起こることが明らかとなった。これらの行動はモルヒネのくも膜下投与により抑制され、ナロキソン投与により拮抗された。以上の結果から骨髄内刺激により痛みを知覚し、皮膚受容野で痛覚過敏を引き起こすことが行動薬理学的に明らかとなった。 これらの結果から、骨髄内の神経も痛みの受容に関わっており、骨髄からの刺激により該当皮膚受容野で関連痛が起き骨折手術後の創部通を増強する可能性が示唆された。本研究の結果は、骨転移性がん痛や整形外科手術後痛、関節炎・骨髄炎の痛みの機序の一部を明らかにする重要な知見であった。
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