研究課題/領域番号 |
24791592
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
井口 直也 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (00372623)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 急性腎障害 / 臓器移植 |
研究概要 |
研究成果の具体的内容 1.臓器移植後の急性腎障害の早期発見にNGALが役立つか。倫理委員会で承認後に研究を開始した。臓器移植後患者25例において、急性腎障害発症患者と発症しなかった患者で集中治療部入室時の血清および尿中NGAL値に有意差を認めなかった。いくつかのcut off値をもとにROC曲線を作成したが、AUC 0.67(血清)と急性腎障害の識別能としては低かった。研究計画書に記載した「研究が当初の計画どおりに進まないときの対応」をおこなった。尿中NGAL値を尿中クレアチニン値で補正を行い再検討したが同様の結果であった。L-FABPについても検討したが同様の結果であった。入室2日目のNGAL値も有意差を認めなかった。NGAL値は急性腎障害の早期発見の予測因子にはならなかった。2.臓器移植後の血液浄化法導入の予測因子にNGALがなり得るか。血清および尿中NGAL値は血液浄化法導入の予測因子にはならなかった。尿中NGAL値を尿中クレアチニン値で補正を行い、L-FABPについても検討したが同様の結果であった。3.臓器移植後腎機能低下症例での腎機能回復に関する指標としてNGALが使用できるか。集中治療部入室中のNGAL、L-FABP値は腎障害が持続する患者では上昇し、腎障害が回復する患者では低下する傾向が認められた。 意義 様々なlimitationが存在するが、本研究では臓器移植後の急性腎障害予測におけるNGALやL-FABPの意義は乏しかった(上記1,2)。しかし、NGAL値は腎機能の経過を反映する可能性があることが示唆された(上記3)。 重要性 NGAL値が急性腎障害の予測に万能ではなく、役立ちにくい患者状況があることが示唆された。臓器移植後腎障害は腎障害の原因が多く、タイミングもまちまちである。NGAL値は腎機能の現在の状態や腎臓治療のモニタリングとしては有用である可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画調書に記載した研究目的は 1.臓器移植後の急性腎障害の早期発見にNGAL(ヒト好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン)、RRI(腎臓超音波検査におけるrenal resistive index)が役立つか。2.臓器移植後の血液浄化法導入の予測因子にNGAL、RRIがなり得るか。3.臓器移植後腎機能低下症例での腎機能回復に関する指標としてNGAL、RRIが使用できるか。4.免疫抑制剤による急性腎障害動物モデルの作成。の4つである。うち、1,2のNGALに関しては結果を得て、学会発表および論文投稿を既に行った。「研究が当初の計画どおりに進まないときの対応」である尿中クレアチンでの補正値およびL-FABPの検討も終了した。研究目的1,2のRRIについては倫理委員会での承認を得て、測定系を確立し、実際にdata取得を始めている。研究目的3のNGALは現在data解析中であり、RRIはdata取得中である。研究目的4は動物実験講習会の受講を済まし、準備を進めている段階である。研究目的のほぼ半分を達成しており、達成度としてはおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はRRI(腎臓超音波検査におけるrenal resistive index)の検討および動物モデルの作成を推進する。RRIについては測定システムを構築できたので、実際に測定を開始している。RRIが急性腎障害の予測に役立たない場合は「研究が当初の計画どおりに進まないときの対応」のとおり、カラードップラーモードでの腎門部を除く腎縦断面における血流面積/腎臓面積での検討を行う。超音波画像は録画保存してあり、追加再検討が可能である。動物モデルの作成についても準備が出来次第開始予定である。研究成果は日本集中治療医学会、海外の集中治療医学会で発表し、評価、情報収集を行う。 現在までに得られた結果を再検討し、腎障害回復期のNGAL、L-FABPの有用性を検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画書に記載した通り、RRIの測定にあたっては体血圧の影響を除く必要がある。そのためには体血圧とRRIを時相を合わせて同時に測定し検討することになるが、同時測定システムを作成するのに必要な記録装置およびソフトウエアの選定に時間を要した。そのため当初の見込み額と執行額が異なったが、研究計画に変更は無い。前年度の研究費も含めて当初の計画通り研究を実施していく。 免疫抑制剤による急性腎障害動物モデル作成にあたっては実験用動物、免疫抑制剤およびNGAL、L-FABPの測定キットの購入が必要である。 研究成果を国内外で発表し情報収集を行うために費用が必要である。
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