研究概要 |
レミフェンタニルの持続静脈内投与によるμ受容体の内在化について検討を行った。レミフェンタニルを10μg/kg/minおよび1μg/kg/minでそれぞれ30分と120分持続静脈内投与し、共焦点レーザ顕微鏡と電子顕微鏡で脊髄後角ニューロンにおけるμ受容体の内在化を観察した。内在化の程度はレミフェンタニルの投与量に依存する傾向がみられ、我々が先に示した投与時間依存の痛覚過敏との関連性は低いと考えられた。電子顕微鏡所見では特に直径10μm程度の小型ニューロンにおいてgolgiなど細胞内への反応産物の蓄積がみられたが、ニューロン間での内在化の差が大きく、傾向を形態学的につかむことは難しかった。これは時間設定、あるいは他のオピオイドと違い長時間持続的にアゴニストが作用し続けているというレミフェンタニルの特徴によるのではないかと推測した。 そこで追加実験として、まず内在化の傾向が比較的明らかであるDAMGOとモルヒネを使用し、過去の文献による典型的な処理時間・投与量における内在化の電子顕微鏡像を得ることとした。両者をそれぞれ投与後、30分、60分、90分、120分の時点で観察を行ったところ、DAMGO群の投与30分後においてμ受容体のimmunoreactivityは中小型ニューロンのcytoplasmに広く分布し、特にlysosome, multivesicular bodyおよびゴルジに強く発現していることが分かった。一方60分後においては細胞膜直下の細胞質に強く発現し、ゴルジにもみられた。90分、120分においては60分後と同様の所見であった。モルヒネ投与群ではすべてのポイントでμ受容体は細胞膜表面に存在し、内在化は認めなかった。DAMGO投与におけるμ受容体内在化のサイクルはおよそ60分であるとした過去の報告を形態学的に裏付けることができた。
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