研究実績の概要 |
今年度は臨床的に頻用されているオピオイドである、フェンタニルのくも膜下投与によるμオピオイド受容体(MOR)の内在化について検討を行った。光学顕微鏡および電子顕微鏡の双方によりDAMGOによる内在化と比較検討した。全身麻酔下にラットのL4-5椎間にくも膜下カテーテルを挿入し、フェンタニル(10 μg/10 μL)およびDAMGO (100 μg/10 μL)を投与した。投与後5, 15, 30, 60分の時点でラットを灌流固定し脊髄を摘出、光学顕微鏡用および電子顕微鏡用にそれぞれ凍結切片を作成し、免疫染色法を用いてMORを可視化し内在化の観察を行った。 フェンタニルおよびDAMGOはともに投与後5分から強い受容体の内在化を引き起こしており、その発現時間には差がなかった。しかし細胞膜への受容体のrecyclingはフェンタニルが概ね60分でほぼ完了していたのに対し、DAMGOではおよそ30%の受容体がendsomeに残存しており、フェンタニルの方が早い傾向が認められた。電子顕微鏡による観察によれば、内在化した受容体はlysosome, multivesicular bodyおよびゴルジに強く発現しており、これは受容体の分解経路であると推測されることから、細胞膜へのいわゆる”recycling”は同一受容体が細胞膜表面へ戻されるのみならず、新規の受容体合成によるところが大きいと推測された。
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