研究課題/領域番号 |
24791594
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研究機関 | 独立行政法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
松崎 孝 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 医長 (10423328)
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キーワード | 肝移植 / 酸化ストレス |
研究概要 |
本研究は、新たな酸化ストレス測定法を用いて重症肝疾患患者での酸化ストレス度、抗酸化力の変化について明らかにする。具体的には(1)肝移植レシピエント及びドナーの血液を用いて酸化ストレス度、抗酸化力を全身麻酔導入後、再灌流前、再灌流後に測定し、動態を明らかにする。(2)酸化ストレス度とclinical outcomeとの関係を検討し、再灌流後の酸化ストレス度が術後管理の指標になるかを検討した。評価項目は肝移植周術期の酸化ストレス度(d-ROMsテスト),抗酸化力(BAPテスト),患者の臨床的背景・予後,肝移植周術期の生化学・血液ガス分析検査結果の検討を行った。 d-ROMに関しては、ドナーとレシピエントに発現したものはそれぞれ、242.58±88.70 vs 234.79±56.51で、p=0.7487と有意差は認められなかったが、BAPテストにおいてはドナーとレシピエントにおいて、それぞれ1956.17±239.45 vs 2265.07±245.93で、p=0.0004と有意な上昇が認められた。臨床的指標として血清ASTおよびALT、血ガスで測定できる乳酸値などの指標に関しては、明らかな関係は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究施設を変わったこともあり、期限までに予定していた症例数に達することができず、仮説通りの結果が得られなかった点。 自己の症例数に関する検討の不充分な点や、再度酸化ストレスに関する指標の見直しが必要と考えられ、症例数を増やして別の指標を測定することで、検討を行う必要性が生じたため。
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今後の研究の推進方策 |
今までの問題点としては、酸化ストレスがレシピエントに発生していることは確かめられたが、その臨床的意義に関しては不明な点が多い。そこで生体および脳死肝移植術中の血行動態および酸素消費量の測定を行うことで、虚血再灌流時における生体内の変化を酸化ストレスの関与とともに前向きにデータの収集を行う。 全身麻酔導入後および前無肝期、無肝期、再灌流後1時間、閉腹時の時点で、酸素消費量の測定および血行動態の変化を記録して、再灌流後の変化において、酸化ストレスが関与しているという仮説に基づき、麻酔導入後と再灌流後1時間における酸化ストレスの血清の指標として報告されている、コエンザイムQ10を測定して、酸素消費量との関係を調べた。 肝臓の組織も術中にドナーの肝切除前、レシピエントの閉腹前に肝生検を行い組織における酸化ストレスの指標である、8-OHdG(8-ヒドロキシーデオキシグアノシン)を測定し、同じく酸素消費量との関係を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
今回検体検査を行い間接経費として42万3360円の使用を行ったが、残金が77万6640円と至った。施設移転に伴い、資金を使用するにあたって十分な期間と症例数が得られなかったことが要因として挙げられる。 残金を症例数増加に伴い、臨床データの詳細な解析や、新たな酸化ストレスの指標を残金を利用して測定を行う予定である。
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