肝移植術中における虚血再灌流障害は、術後のグラフト機能に影響を与え、予後にも関与する可能性が示唆されている。虚血再灌流障害が生じるメカニズムは多様な因子が関与しており、現在までも酸化ストレスや炎症性サイトカインが発生することにより、細胞保護的に発現する蛋白など様々な因子が報告されている。我々の施設では以前より酸化ストレスに着目を行い、酸化ストレスを反映する血清のマーカーを報告してきたが、再灌流時に発生する酸化ストレスと、その臨床的意義に関して検討を行った。 当院で生体および脳死肝移植術を受けた患者33人(再移植患者を含む)に対して、術中における血清の酸化ストレスのマーカーである、血清のコエンザイムQと内皮細胞障害の指標であるトロンボモヂュリンを全身麻酔導入後と、再灌流1時間後に測定する。再灌流前後で血清コエンザイムQとトロンボモジュリンの変化は認められるが、術後1日目・2日目・3日目・7日目の肝酵素ASTやALTとの関係性や予後、術後合併症として再開腹の有無、急性拒絶反応の有無、ICU滞在日数や病院滞在日数を収集し調べるも、統計学的に有意な関係は認められなかった。術中の酸素消費量の測定も行い、再灌流前後での変化と酸化ストレスとの関係について調べたが、酸素消費量は全身麻酔導入後から無肝期まで低下する傾向が認められるが、再灌流1時間後には上昇する傾向が認められ、大きく酸素消費量が上昇するほど術後の刊行曽我上昇する傾向が認められた。コエンザイムQとの関係は統計学的に有意な関係は認められなかった。 今回の結果を米国の麻酔学会と日本集中治療学会の総会で発表した。
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