研究概要 |
重症疾患患者や大手術後患者ではストレス性高血糖が発生することが以前から知られていた。近年、その予後、合併症などに関与することが多く報告されている。その機序についてストレスホルモンによるインスリン分泌低下や肝臓の糖新生、グリコゲン分解の亢進等の報告があるが、麻酔薬を含む周術期関連薬剤がグルコースの細胞内取り込みに及ぼす影響については不明な点が多い。そこで、研究代表者は麻酔薬そのものが細胞レベルでのインスリン抵抗性を亢進させる作用があると仮定し、以下の実験を行った。a.酵素サイクリングを用いた比色法による細胞内グルコース取り込み実験 12well plateで分化培養した3T3L1細胞にsevoflurane を作用させ、2-deoxyglucoseの取り込みを酵素サイクリングを利用した比色法を用いて測定した。結果:Sevoflurane曝露では2-deoxyglucoseの細胞への取り込み抑制が観察された.b.細胞膜分画、細胞質分画のWestern blottingによるGLUT4蛋白質定量 実験 6well plateで分化培養した3T3L1細胞(マウス繊維芽細胞由来脂肪細胞)にsevoflurane 4%を作用させ、洗浄した後、超音波破砕装置にて細胞を破砕し、細胞分画法で細胞膜成分および細胞質成分に分離しwestern blotting法を用いてGLUT4 を観察した。結果:Sevoflurane曝露では細胞膜へのGLUT4のtranslocationが制された。 c.細胞膜、全細胞成分でのWestern blottingによるsevofluraneの作用点の探索 b.と同様の方法を用いてInsulin Receptor, PKCζ, Akt-1の半定量的実験を行なった。結果:Sevoflurane曝露ではInsulin Receptorの細胞膜への発現抑制が観察された.
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