研究課題/領域番号 |
24791605
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
久保田 陽秋 琉球大学, 医学部附属病院, 病院助教 (10600421)
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キーワード | 中大脳動脈閉塞 / マウス / 一酸化窒素合成酵素 / 脳虚血 / 脳梗塞 / eNOS / nNOS / iNOS |
研究概要 |
【概要】 脳梗塞における一酸化窒素合成酵素(NOSs)系の役割は不明である。この点についてNOSs系完全欠損マウスを用いて検討した。その結果、中大脳動脈閉塞後の脳梗塞サイズは、野生型マウスと比較してNOSs系完全欠損マウスで有意に縮小していることを見出した。この脳梗塞巣の縮小現象は一過性虚血実験でも永久虚血実験でも確認された。また、神経学的評価や生存率についても、NOSs系完全欠損マウスで野生型マウスと比較して有意差をもって良かった。この知見から、NOSs系は脳梗塞において傷害的な役割を果たしていることが示唆される。他の臓器ではNOSs系は保護的な役割を果たしているが、脳においては逆の役割を果たすことを明らかにし、NOSs系の多様性を認めた。われわれの知見は、NOSs系の抑制が脳梗塞の新しい治療戦略になりうることを明らかにした点においても大きな学術的意義があると考えている。 【昨年度の報告からの進捗状況】 昨年度は中大脳動脈閉塞に用いた糸が太すぎるために、適切な挿入・閉塞ができていなかったことが判明した。糸の太さを細くすることで中大脳動脈閉塞・血流変化が安定して得られるようになり、脳梗塞を安定して誘導可能となった。その上で、上記のような結果を得ている。マウスの種による脳血管解剖・発生の違いを検討するために、墨汁灌流による脳血管観察を行ったが、明らかな差は認めなかった。 【今後の予定】脳梗塞がNOSs系完全欠損マウスで小さくなったことの機序を解明するために、中大脳動脈閉塞後のマウス脳で発現するタンパクの違いをウェスタンブロットで解析していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度よりは、実験手技が安定し、学術的意義のある結果が得られている。今後はその結果が得られた機序・原因について、実験を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
中大脳動脈閉塞処置後に、脳で発現するタンパクのチロシン残基ニトロ化反応が、NOSs系完全欠損マウスでは弱くなっていることが考えられ、それをウェスタンブロットで確認する予定である。その他にも、今回、NOSs系を完全欠損させたことで脳梗塞が小さくなった原因・機序に関して明らかにする手だてを考え、実行していく予定である。
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