研究課題
平成27年度、申請者らはヒトTACR1遺伝子の一塩基多型(SNP)が術後悪心嘔吐(PONV)に関与することを発見し、論文発表として報告した。特にTACR1遺伝子のSNPのうち、最もPONVに関与する変異はエストロゲン応答配列内に存在したため、当該SNPはエストロゲン曝露に対するTACR1遺伝子の発現を変化させる可能性が示唆された。これを検証するため、手術モデルマウスを作製し、エストロゲンを投与した際に行動学的な嘔吐の代替行動が出現するか検証した。その結果、エストロゲンと手術侵襲を組み合わせることにより、嘔吐中枢の一部と考えられる部位においてTACR1遺伝子発現は増大し、また行動学的にも嘔吐の代替行動が強化されることが確認された。以上2実験によりヒトにおいて女性でPONVの発症率が高い理由の一つとして、手術侵襲に血中エストロゲンの組み合わせがPONVの引き金となりえる可能性を示唆した。さらに性差の機序を解明するため、ヒト血液中のTACR1遺伝子のプロモーター領域のメチル化率を測定した結果、男性において女性のメチル化率が有意に高いことが示された。またマウス脳において全mRNA網羅的解析(トランスクリプトーム解析)を行い、TACR1遺伝子のリガンドであるタキキニン1をコードする遺伝子であるTAC1遺伝子の発現が増大することを発見した。これらのことから、TACR1遺伝子およびタキキニン1の周術期の制御がPONVの新たな治療ターゲットとなる可能性を発見した。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
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