生後7週程度のGAD67-GFPマウスを用いて、術後1週間後にvon Frey法を用いて機械的刺激に対する逃避閾値が低下したマウスに対し、in vivoパッチクランプを行った。しかし、が、SNL作成時の手術の影響で脊髄近傍の癒着が著しく、脊髄を傷つけることなく椎弓切除を行うことが困難とのことであり、神経傷害モデルを坐骨神経絞扼モデル(CCIモデル)に変更し、記録している神経が感知しうる受容野の変化を計測するというように研究を変更した。SNLモデルと同様、イソフルレン麻酔下に右大腿外側に2cmの皮切を加え、筋肉の分け目を鈍的に剥離し坐骨神経を露出・単離する。坐骨神経を4-0絹糸で1mm間隔で4回ゆるく結紮し、閉創する。手術1週間後に手術側の疼痛閾値が低下していることを確認後、術後3週間までの間でin vivoパッチクランプを行った。ウレタン麻酔(1g/kg腹腔内投与)の後、T10~L2にかけての椎弓切除を行い、脊髄を露出する。実験台にマウスを固定し、37度に加温されたリンゲル液を10mL/minの速度で脊髄近傍に還流しながら実体顕微鏡を用いて記録用ガラス電極をL4後根付近の脊髄後角に近づけ、電極抵抗をモニターしながらホールセルパッチクランプの状態を形成する。細胞は電位固定法により-70mVに固定し、興奮性シナプス後電流(EPSC)を計測出来るようにし、マウス右後肢を筆で刺激することによってEPSCが増強する範囲を記録した。 記録された神経が触刺激に対して反応する受容野は、CCIによる神経障害によって、何も手術していないnaiveマウスと比較すると約3倍に拡大していた。この結果から、少なくとも脊髄後角においては神経障害によって、1つの神経が受容する皮膚分節が大きく拡大することが生理学的に確認された。
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