研究課題/領域番号 |
24791616
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
澤田 麻衣子 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90330860)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 遺伝子治療 |
研究概要 |
<目的>敗血症時において、マクロファージの細胞死・貪食能低下は、病原体や死細胞のクリアランスが低下し生体の炎症消退を遅延させる要因となる。炎症消退に働くサイトカインIL-10やセリンスレオニンキナーゼのAktがマクロファージの貪食能に関与している事は報告されている。また、炎症時に惹起されるタンパク質PTEN、PDCD4はそれぞれ下流に存在するAktのリン酸化、IL-10の発現を抑制し、炎症を亢進させる作用を持つ。タンパク質の発現が細胞機能を制御する事は周知であるが、近年タンパク質の発現を制御するmicroRNA(miRNA)の働きが注目されている。今回我々は敗血症時にmiRNAの一つのmiR-21が、PTEN、PDCD4の発現を抑制することでAktのリン酸化やIL-10の発現及び、貪食能を制御するとの仮説に基づき実験を行った。 <方法>LPS投与後(10ng/ml)のmiR-21の経時的発現変化、大腸菌片に対する貪食能の変化、Aktのリン酸化及びIL-10の細胞内発現量の変化を観察した。また、Nucleofection法を用いて単球系細胞(分化型THP-1細胞、ヒトマクロファージ)にmiR-21のmimic及びsilencerを導入することで人為的にmiRNAの過剰発現・発現消失を行い、その時の上記の変化を観察した。 <結果>LPS投与により経時的にmiR-21の発現が上昇し、貪食能が上昇した。miR-21の過剰発現条件ではPTEN及びPDCD4の発現は低下、Aktのリン酸化、IL-10の上昇を認め、貪食能が亢進した。過小発現条件ではPTEN及びPDCD4の発現は上昇、Aktのリン酸化、IL-10の低下を認め、貪食能が著明に低下した。 <結語>敗血症時において、miR-21の発現がマクロファージの貪食能制御に重要な役割を果たすことを明らかにした
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定より培養細胞実験が遅れているため、当初の予定であった動物実験は次年度に施行予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ラットを用いての動物実験 1) 生食群(0.9% NaCl 2.5ml/kg/hr), 2) 高血糖負荷群(20% Glucose 2.5ml/kg/hr), 3) LPS群(0.9% NaCl 2.5ml/kg/hr+LPS 2.5mg/kg), 4) LPS+高血糖負荷群(20% Glucose 2.5ml/kg/hr+ LPS 2.5mg/kg) の群において、血液中又は腹腔内Monocyte/Macrophaeを回収し、平成24年度のIn Vitro実験系で調べた項目に関して、72時間の経時的変化を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
miRNA関連品、Nulcleofection法(新しい電気穿孔法による遺伝子導入法)を用いた関連試薬、PCR関連品、インヒビター、抗体、ペプチド、ELISAキット、培養関連品等を使用予定である。 miRNA関連品、Nuleofection関連のキット、ペプチド、ELISAキットについては、1バイアル、1キット当たり5万円から20万円程度であり、1回の実験で2万円から5万円程度のコストを要する時もある。フローサイトメトリー用の抗体は、固定標本に比べ染色時に高濃度の抗体を要する為、使用量が多くなる。
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