研究課題/領域番号 |
24791619
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
松浦 正 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90619793)
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キーワード | 局所麻酔薬 / 脂肪乳剤 / 単離心筋細胞 / パッチクランプ / ランゲンドルフ |
研究概要 |
ブピバカインの心毒性に対する脂肪乳剤の効果について、モルモット摘出心を用いたランゲンドルフ灌流実験で検討した。25μMのブピバカインは左室駆出圧(dp)と心拍数(HR)を著明に抑制し、心電図でのQRS幅を延長させた。灌流液に脂肪乳剤を10%加えると血行動態は元の値の70%まで回復し、QRS延長も改善した。次に脂肪乳剤がブピバカインを取り込み遊離型ブピバカインの濃度が低下するという「lipid sink」の効果を検討するために、ブピバカインと脂肪乳剤を加えた灌流液を超遠心し、脂肪層を除去した「遠心液」を作成した。この「遠心液」と元の脂肪乳剤混合液を各々灌流し、その効果を比較した。「遠心液」と「脂肪乳剤混合液」の心機能抑制効果はほぼ同等で、心電図のQRS変化も同程度であった。この結果から脂肪乳剤を用いた「リピッドレスキュー」の機序として「lipid sink」が大きく関わっていることが示唆された。 ブピバカインを含めた局所麻酔薬の主作用部位はNaチャネルであるが、Naチャネルは心電図のQRS幅に大きく影響する。そこでモルモットの単離心筋細胞を用いて、ブピバカインによるNaチャネル抑制に対する脂肪乳剤の効果をパッチクランプ法で検討した。ブピバカインは濃度依存性にNa電流を抑制し、灌流液に脂肪乳剤を10%加えるとNa電流は回復した。回復の程度としては、50μMブピバカインで約50%に抑制されたNa電流は脂肪乳剤添加によりコントロールの約70%に回復した。これらの結果から「リピッドレスキュー」の効果には、脂肪乳剤がブピバカインによるNaチャネル抑制を回復させることが関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脂肪乳剤の効果をより詳細に検討するために、当初の実験計画以外にモルモット摘出心臓を用いたランゲンドルフ灌流実験を行い、概ね仮説通りの結果を得ることができた。単離心筋細胞を用いたパッチクランプ法によるNaチャネルでの実験を現在進めている段階である。 また昨年度に得られた研究結果をまとめて英文学術誌に投稿し受理された。これらから研究は概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
単離心筋細胞を用いたNaチャネル記録による研究については、ほぼ同じ研究内容がドイツの施設から英文学術誌に2014年2月に掲載された。そのため今後の推進方策として、違う系統での実験が必要だと考えている。具体的にはモルモットを用いたin vivoでの「lipid sink」の検討を執り行う計画を立てている。 in vivoでの実験では、全身麻酔下のモルモットを気管切開し人工呼吸を行う。動静脈にカテーテルを挿入して静注薬として①「ブピバカイン」、②「ブピバカイン+脂肪乳剤10%添加」、③「②を超遠心して脂肪乳剤除去した遠心液」の3群に分けて血行動態および心電図の変化を測定する。この結果からvivoでの「lipid sink」を評価する。
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