ヒト大腸癌細胞株HCT116及びHT29細胞にオピオイド(モルヒネ、フェンタニル、レミフェンタニル、トラマドール)を6時間または24時間曝露して各種オピオイドが増殖能に与える影響について調べた。 フェンタニル、レミフェンタニル、トラマドールでは各種濃度及びいずれの曝露時間においてもMTTアッセイで評価した増殖能に変化は見られなかったが、HCT116細胞においてモルヒネ6時間曝露した場合、コントロール群に比べて細胞増殖能は有意に亢進した(しかしBrdU Cell Proliferaiton ELISA kitでは増殖能亢進を再現出来なかった)。さらにモルヒネとフェンタニル先行曝露はHCT116細胞において、5-FU48時間曝露による抗がん作用(増殖能抑制作用)に影響しないことが分かった。 またHT29細胞ではHCT116細胞とは逆に、高濃度(50ng/ml)24時間曝露において増殖能が有意に抑制(MTTアッセイによる)されたために、FACS(BD社、CycleTEST Plus DNA Reagent kit)を用いて細胞周期のどの部分に作用しているかを検討した。G0/G1、S、M期それぞれの割合に差が見られなかったことから、細胞周期の特定部位に作用しているのではないことがわかった。 さらに追加実験として、ヒト肝細胞癌細胞株(HepG2)を購入し同様の実験を行ったがモルヒネ及びフェンタニルは増殖能に影響せず、細胞株によってオピオイドの作用が大きく異なることが示唆された。 今回のin vitroの実験では、モルヒネはμオピオイド受容体以外の経路で癌細胞の種類によっては細胞増殖能に影響を与える場合があるが、5-FUによる抗がん作用には影響しなかった。
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