研究課題/領域番号 |
24791623
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
高薄 敏史 獨協医科大学, 医学部, 講師 (80348052)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 全身麻酔薬 / NK1受容体 / サブスタンスP |
研究概要 |
侵害受容(ホルマリン皮下注)による脊髄後角第1次求心性線維からのサブスタンスP放出に対する全身麻酔薬の影響をneurokininn 1受容体 (NK1R) internalizationを用いて評価した。 ホルマリン皮下注により、脊髄後角におけるNK1R internalizationを示すニューロンは有意に増加し、さらにフェンタニルの腹腔内投与によりこのinternalizationは抑制された。全身麻酔薬としてプロポフフォール、ペントバルビタール、亜酸化窒素、イソフルランをそれぞれ単独で投与したところ、いずれの麻酔薬も脊髄NK1R internalizationを抑制しなかった。ところがイソフルランと亜酸化窒素の併用によりNK1R internalizationは有意に抑制され、これらの麻酔薬の相乗効果を認めた。またこの相乗効果はオピオイド受容体拮抗薬であるナロキソンでは減弱されなかった。さらにサブスタンスPのくも膜下投与により誘発されたNK1R internalizationに対してはフェンタニル、イソフルラン+亜酸化窒素のいずれも抑制しなかった。つまりこれらの作用は後シナプスを介さないと考えられた。なお全ての麻酔薬において脊髄後角c-Fos抑制作用を認めた。 以上のことから本研究で用いた全身麻酔薬の単独投与では脊髄サブスタンスPに対する抑制は行わないが、フェンタニル、イソフルラン+亜酸化窒素の併用によりサブスタンスP放出を抑制し、これらはシナプス前性抑制を示すことがわかった。 今後、これらの結果をもとに研究を進め、電気生理学的検討をする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
全身麻酔薬の脊髄後角サブスタンスP放出への影響をNK1R internalizationを用いて明らかにできた。これらの結果はシナプス伝達への全身麻酔薬の作用を明らかにする一助になると考えている。しかし揮発性麻酔薬と亜酸化窒素の相乗効果など当初考えていなかった効果が認められ、かつこれらの機序は不明で、今後の課題と考えている。なお本研究の結果はすでに論文として投稿済みである。 以上の点からも本研究の進捗状況としては問題ないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
各全身麻酔薬の単独使用による脊髄サブスタンスP放出への影響は明らかになっている。今後はこれらの麻酔薬の併用による相乗効果の機序を明らかにすべく、過去の研究を参考に多角的なアプローチを行っていく方針である。またパッチクランプなどの電気生理学的研究などの必要もあり、微小興奮性シナプス後電流(mEPSCs)の測定を行い、発生頻度および振幅の評価を行う予定である。 さらにデスフルランやケタミン、あるいはキセノンなどまだNK1R internalizationを評価していない薬剤がある。これらの侵害受容性サブスタンスP放出への影響を検討したい。 またc-Fosのほか、p-ERKなどの発現を調べることも考慮している。
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次年度の研究費の使用計画 |
免疫染色用抗体(NK1受容体、2次抗体)その他免疫染色用の消耗品、麻酔薬、サブスタンスPなどの試薬。固定用薬剤(パラホルムアルデヒドなど)。
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