研究実績の概要 |
神経因性疼痛は中枢あるいは末梢神経の障害によって起こり、その痛みは患者のQOLを著しく低下させる。そのため、神経因性疼痛の緩和薬が果たす役割は大きい。局所麻酔薬は臨床使用濃度での作用は可逆的で安全だが、脊髄くも膜下麻酔に用いた場合に馬尾症候群や一過性の神経症状などの末梢神経障害を起こすことがある。局所麻酔薬には神経毒性があると考えられており、中でもリドカインは毒性が強いことで知られている。本研究は、局所麻酔に起因する末梢神経障害をいかに防ぐことができるか、すなわち局所麻酔薬による神経因性疼痛を緩和するメカニズムの解明を目的とした。 ノイロトロピンは、整形外科、麻酔科 (ペインクリニック)、皮膚科領域の治療において鎮痛薬として用いられており、近年神経因性疼痛に対する緩和作用が注目されている。しかし、これまで臨床的な報告は数多く認められるが、作用機序を明確にした報告は認められていなかった。 本研究では、ノイロトロピンが培養感覚神経細胞の軸索輸送に及ぼす影響を明らかにした (Isonaka et al., Neurosci Lett 2013)。また、ノイロトロピンがリドカインをはじめとする局所麻酔薬の神経毒性に対して及ぼす影響を検討した (Isonaka et al., 論文投稿中)。本研究結果は、ノイロトロピンをはじめとする薬剤の神経因性疼痛緩和、および神経保護効果の機序について検討した国内外初の知見となった。
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