研究課題/領域番号 |
24791626
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
甫母 章太郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (60385359)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
本研究の目的は、周術期のバルプロ酸投与による術後痛の軽減とそのメカニズムを、基礎実験及び臨床試験両側面から解明する事である。われわれは平成23年度にバルプロ酸の連続経口投与により、ラット脊髄内アストロサイトに発現するグルタミン酸トランスポーターの減少を回復させて鎮痛を起こすことを誌上発表した。またバルプロ酸がラットの慢性痛モデルである坐骨神経部分結紮モデルにおいて、用量依存性に2週間にわたり術後痛の軽減を確認している。当該年度は、これらの結果とともに髄腔内投与の結果も追加し、第31回アメリカ疼痛学会にて発表した。 当該年度の研究計画は、基礎研究及び臨床試験を行う準備である。当研究施設は共同利用施設であり汎用性のある機器は保有している。しかしながら附属病院分院の研究棟であるため一部欠いている。そのため基礎実験に必要な器具の購入を行った。 具体的にはVon Frey式感覚測定キット、ラット用メタルメッシュ、手術器具などである。 また臨床試験では、周術期のバルプロ酸の投与及びバルプロ酸とプレギャバリンの併用についての術後痛の軽減効果を調べる事が目的である。臨床試験に先立ち、プレギャバリンに無効であった難治性の慢性疼痛患者約30症例に対して、バルプロ酸の追加投与を行った。バルプロ酸とプレギャバリン併用投与を行った全症例で重大な副作用が発生しなかった事を確認した。この事は臨床試験を行う上で、周術期のバルプロ酸とプレギャバリン併用における副作用についての前試験として必須である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、周術期のバルプロ酸投与が術後痛の軽減及び慢性疼痛への移行を予防するを確認する事とそのメカニズムの解明する事を、基礎及び臨床両側面から解明することである。当該年度の研究計画は、基礎研究及び臨床試験を行う準備である。当該年度における基礎研究に対して必要な器具の購入を行った。またバルプロ酸がラットの慢性痛モデルにおいて、用量依存性に術後痛の軽減を確認している。臨床においてバルプロ酸とプレギャバリン併用の副作用の有無も確認した。一方スタッフの臨床研究における教育の徹底には一部課題もある。
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今後の研究の推進方策 |
ラット行動試験に加え、摘出した脊髄組織をウェスタンブロット法を用いて、グルタミン酸トランスポーターの発現量を測定する。これらの基礎実験で得られた結果及び知見を臨床試験に利用する。前試験として我々の施設で、これまでに得られた手術患者のデータをもとに、バルプロ酸服用患者と非服用患者との多変量解析を行う。次にバルプロ酸服用患者と非服用患者とで、乳房切除術及び開胸手術後のVisual Analog Scale及び鎮痛薬使用量の比較を、二重盲検無作為対照試験で行う。低予算で、段階的に臨床試験を進めていく。必要に応じて米国Wake Forest Universityより、研究を進めていく上での助言を受ける。
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次年度の研究費の使用計画 |
薬剤の効果を評価するために、ラットの疼痛閾値を行動試験で確認するとともに、ラットが過度に鎮静されていないかを評価する必要がある。この事を確認するために、ラット用ロータロッドを購入する。またグルタミン酸トランスポーター定量に必要なウェスタンブロット電気泳動、転写用装置、その他消耗品として動物、薬剤投与を行うための髄腔内カテーテル、ウェスタンブロット用薬品、フィルム等の購入をする。
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