我々はSDラットを用いて基礎的動物実験を行った際、慢性疼痛モデルを作成する前から予防的にバルプロ酸の経口投与行った群がコントロール群と比較して、慢性疼痛モデル作成術14日後の疼痛閾値を上昇させた。この効果はグルタミン酸トランスポーターの拮抗薬であるDihydrokainic acidの髄腔内投与によって拮抗される事が分かった。 これらの結果はバルプロ酸の予防的経口投与が脊髄のグルタミン酸トランスポーターの減少を抑制する事により、神経損傷後の脊髄のグルタミン酸の濃度を減少させ、疼痛閾値を減少させる事を示唆する。 一方で、バルプロ酸はグルタミン酸トランスポーターを活性化するプレギャバリンとの併用により相互作用が期待される。当院ペインクリニックにおいて慢性疼痛患者に対してプレギャバリンの内服治療を受けているが、効果を認めない約30症例にバルプロ酸の併用治療を行った。そのうち2症例においてプレギャバリンとバルプロ酸併用にて痛みが軽減した症例が認められた。また全症例において重大な副作用を認めなかった。 これらの結果はグルタミン酸トランスポーターを介した併用療法に対する前向き試験への道筋となり得る。
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