研究課題
若手研究(B)
前立腺癌は近年、日本においても急速に罹患率が上昇してきている癌であり、過剰診断・過剰治療が問題となっている。本研究では糖転移酵素C2GnTが種々の癌において予後を判断するマーカーとなりうることから、前立腺癌の予後マーカーとしての可能性を検討した。本年は、まずC2GnTに特異的なモノクローナル抗体を作製し診断マーカーとしての可能性を検討した。樹立した抗C2GnT-1モノクローナル抗体 (mAb) による癌組織染色が癌悪性度診断に有用であるかを確認するため、以下の計画に基づき検証した。1: 抗C2GnT-1 mAbの癌組織染色における最適な染色条件の決定;ホルマリン固定されている癌組織標本は、抗原がマスキングされるが、抗原腑活化条件、染色条件を検討し安定した染色像がえられる条件を選定できた。2:染色検体の判定基準を定めるため、病理診断を含めたカンファレンスによる陽性細胞の決定;細胞核付近のゴルジ体に発現、抗体による染色が見られる癌細胞を陽性細胞として判定を行った。3:前立腺癌組織標本の染色によりC2GnT-1発現と癌悪性度の検証;陽性癌組織標本の判断基準選定後、弘前大学泌尿器科においてこれまでに保存されている2005年から2011年の前立腺癌の組織染色を行った。染色後、陽性癌および陰性癌患者の再発率を算出し、また再発の危険因子として多変量解析を行った。その結果、C2GnT染色陽性である前立腺癌患者は、再発率が有意に高く、多変量解析でも独立した再発の危険因子であることが示され、樹立した抗C2GnT-1 mAbが癌悪性度診断に有用であることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
現在のところ、抗C2GnTモノクローナル抗体の腫瘍組織染色条件が決定し、陽性の判断基準もおおむね定まった。さらに、症例数を増やして染色を行い、前立腺癌においては癌の再発との関連も明らかになってきており、当初の予定どおり抗C2GnTモノクローナル抗体による免疫組織染色が前立腺癌の悪性度診断に有用である可能性が示唆されている。さらに、追加の検討として尿、血液を用いた体液診断の系の立ち上げも目指しており、こちらはまだ症例数は少ないが、体液診断にも本抗体が有用である可能性も出てきており、研究は順調に進展していると考えている。
平成24年度の実験計画はおおむね順調に進展していることから、研究計画通りに次の段階に移行する。予定としては、尿中に含まれる糖タンパク質の糖鎖構造解析を行い、C2GnTにより作られるコア2糖鎖構造を持つタンパク質の存在を確かめる。すでに、糖タンパク質としてはMUC1と呼ばれるムチン型糖タンパク質を予想しており、標的としている糖タンパク質の有無、コア2糖鎖構造の有無を検証していく予定である。また、糖鎖と糖タンパク質を認識する抗体の作成準備に取り掛かる予定である。
該当なし
すべて 2013 2012
すべて 学会発表 (7件) 産業財産権 (1件)