骨盤内手術後の勃起障害発生メカニズムを解明および勃起障害を改善させる治療法を開発するために、ラット海綿体神経剥離モデルを用いて研究を行った。 その海綿体神経剥離モデルの勃起機能は術直後より4週目に有意に低下した。そのことから、機械的な海綿体神経損傷だけでなく損傷後に生じる炎症反応などにより続発的に海綿体神経が損傷をうけた可能性が示唆された。そこで、私たちは炎症反応で重要な役割を担っているインターロイキン-6(IL-6)に着目し、海綿体神経損傷後に損傷部周囲でIL-6の発現が亢進することを確認した。さらに、術直後の過度の発現を抑制すると術後4週目の勃起障害を改善させることができた。そこで、炎症反応が手術後の勃起機能に影響すると判断し、過度の炎症反応を抑えることが骨盤内手術後の勃起機能を改善させるターゲットの1つになり得ると考えた。 私たちは勃起障害を改善させる方法として、組織接着用シートに着目した。そして、平成24年度の研究にてラット海綿体神経剥離モデルに組織接着用シートを使用することで術後の勃起機能を改善させる傾向を認めた。そこで、平成25年度はさらに数を増やし、組織接着用シートの有効性を検討し、組織接着用シートが術後の勃起機能を改善させることを見出した。組織接着用シートは出血コントロール目的に臨床の現場で使用することができ、本研究をもとに神経温存前立腺全摘症例を対象に「ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術後の勃起障害に対する組織接着用シートの有効性に関する臨床試験」を立案し、平成26年に前向き比較試験を開始した。
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