研究概要 |
“肉腫様腎細胞癌の発生に関わる遺伝子異常の同定と新規分子標的治療法の開発”という課題に対して、以下の検討を行った。 1、DNAコピー数異常、遺伝子発現異常に基づいた肉腫様腎細胞癌の発生機構の解明 以前施行した肉腫様腎細胞癌のマイクロアレイのデータを解析したところ、Epithelial to Mesenchymal Transition (EMT)に関わる遺伝子の多くが異常をきたしていることが明らかとなった(CDH1,CTNNA1,OCLN,CDH6低下)。また、EMTを誘導する転写因子であるETV5やZEB2が肉腫様腎細胞癌おいて高発現していた。今後は、多数の臨床検体を用いた免疫染色により、これらの発現を確認する予定である。またin vitroの系においてsiRNAを用いてEMTの誘導や治療標的としての意義について検討する予定である。 2、同定された分子やシグナル伝達異常を標的とした新規標的治療の開発 肉腫様腎癌細胞株を用いたin vitro, in vivo実験系の構築のため、当科で肉腫様腎細胞癌患者から樹立した細胞株を用いて、マウス皮下腫瘍モデルの作成を試みた。初代培養株3株をBALB/c nu マウスの皮下に接種した。一部の株において腫瘍の形成をみとめたが、有意な腫瘍増殖がみとめられなかった。今後は、初代培養株を限界希釈法にてクローニングし、再度腫瘍形成能の有無と、腫瘍の形態や分子生物学背景について検討予定である。
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