研究課題
前立腺癌臨床検体におけるマイクロRNA発現プロファイリングから得られた、癌で発現低下を示すマイクロRNAのうち、既に当研究室で他の癌種で癌抑制型マイクロRNAとして同定されているmiR-145に着目した。miR-145はmiR-143と染色体上でクラスターを形成しているが(miR-143/145)、このクラスターは複数の癌種での発現低下が報告されており、癌抑制型マイクロRNAとしての可能性が示唆されている。今回の機能解析の結果、これら核酸の前立腺癌細胞株への導入により細胞増殖、遊走、浸潤能が抑制された。次に、miR-143/145が制御する遺伝子の探索についてゲノム科学的手法を用いて行ったところ、ゴルジ膜タンパク1(GOLM1)を直接制御することが示された。GOLM1は前立腺癌臨床検体において高発現しており、si-RNAによる遺伝子ノックダウンで癌細胞株の遊走と浸潤が抑制されたことから、癌遺伝子機能を有することが示された。GOLM1は粗面小胞体で合成されたタンパクを加工処理するとともにゴルジ装置を介した輸送に関わる遺伝子であり、ゴルジ装置周辺に多く分布している。GOLM1は前立腺癌患者の尿中での高値が報告されており、診断ツールとしての可能性が示唆されている。今回、前立腺癌における癌抑制型マイクロRNAであるmiR-143/145クラスターとその標的遺伝子であるGOLM1の遺伝子ネットワークが明らかとなり、今後前立腺癌の発生や進行、転移といったメカニズムを解明する上での新たな知見が得られたと考えられる。
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