外科手術不能転移性腎細胞癌に対してチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)を含めた分子標的療法が第1選択とされている一方で、TKIの効果は限定的である。我々のこれまでの研究結果より、TKI耐性機序の一因としてhyperangiogenesisが関連していると考えていた。 しかし、Sorafenib耐性転移性腎細胞癌患者から樹立した細胞株、786-O腎癌細胞株をもとに製作されたin vitroでSorafenib耐性を示す786-O-Sora-resistant株、高腫瘍形成能をもつhyperangiogenicな786-O-H1株、さらにはこれをもとに製作された786-O-H1-Sora-resistant株、いずれにおいてもin vitoではHyperangiogenicであり、Sorafenib耐性を示すが、マウスの腎臓に同所移植をしたin vivoモデルではSorafenibによる抗腫瘍効果が認められた。つまり、in vivoでの耐性は認められなかった。 染色体や遺伝子発現異常によるHyperangiogenesisは、直接のTKI耐性機序ではなく、Hyperangiogenesis-微小環境との相互作用がTKI耐性機序の要因であると考えた。また、これらTKI耐性反応の一部は可逆性であった。 以上の研究結果より、TKI耐性腎細胞癌の克服は、腫瘍微小環境へのアプローチや他の治療法との併用など、これまでとは異なる新規治療戦略が必要と考えられた。
|