研究概要 |
【目的】精巣には精子幹細胞が存在し、造精能の永続性を担保している。停留精巣では精子幹細胞数が減少しており、造精機能障害の原因の1つと考えられている。一方、幹細胞維持にはmicroRNA(miRNA)が必須であるとされているが、そのメカニズムの詳細は未解明である。これらの背景をふまえ本研究では、幹細胞分化障害のモデルとして停留精巣を用い、同細胞の維持に関わるmiRNAを同定してその機能解析を行うことを目的とした。【対象・方法】妊娠S-Dラットに抗アンドロゲン剤を腹腔内投与して得られる停留精巣の雄仔をモデルとして用いた。停留精巣で精子幹細胞数の減少がみられる生後9日目で、正常精巣と停留精巣のmiRNAの発現をマイクロアレイで比較し、発現量が異なるmiRNAを探索した。また、予測プログラムから標的mRNAの候補を検討し、それらの精巣内における局在をIn situ hybridization(ISH)と免疫染色で評価した。さらにGC-1細胞でノックダウン実験を行った。【結果】停留精巣で発現低下する遺伝子としてmiR-135aを同定し、ISHで精子幹細胞への局在を確認した。予測プログラムから、miR-135aの標的として幹細胞維持に必須とされるFOXO1に着目した。FOXO1の発現は免疫染色で精子幹細胞に限局しており、停留精巣ではFOXO1陽性の精子幹細胞が著明に減少していた。さらにノックダウン実験ではFOXO1の発現がmRNA,タンパクレベルともに著明に低下した。【考察】FOXO1は過剰発現すると細胞をapoptosisに誘導することから、今回の実験でmiR-135aがFOXO1の過剰発現を抑制することで精子幹細胞を維持している可能性および停留精巣では精子幹細胞のFOXO1発現維持のためにmiR-135aの発現が低下している可能性が示唆された。
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