前年度までの研究では、ヒト正常前立腺平滑筋細胞であるProstate smooth muscle cell(PrSMC)に対してIL-18を投与することで、Thrombospondin-1(TSP-1)という細胞外マトリックスの発現が増加することを見いだした。今年度の計画として下記を予定していた。 1)前立腺肥大症モデルラットに対するIL-18、抗IL-18抗体投与による胎生期遺伝子発現の検討:当初の研究計画では、泌尿生殖洞を移植した7週齢雄SDラットに対して浸透圧ポンプを埋め込み、薬剤投与を行う予定であった。しかし、安定した薬剤投与モデルを作成することができなかった。今後更なる検討が必要である。 2)ヒト前立腺培養細胞に対するIL-18によって引き起こされる上皮間質相互作用の検討:上皮間質相互作用について検討するため共培養系の確立を試みたが、満足のいく結果が得られなかった。またPrECは増殖実験を行うのに十分な量が得られなかった。そこで、細胞外マトリックスであるTSP-1の前立腺間質への影響を検討することとした。ヒト正常前立腺培養細胞のうち平滑筋細胞であるPrSMCと間質細胞であるProstate stromal cell(PrSC)を用いて細胞増殖能を検討した。TSP-1をPrSMC、PrSCそれぞれに投与し、WST assayを施行した。TSP-1の投与ではPrSCの増殖能の亢進が認められた。 以上から、IL-18によって前立腺平滑筋細胞から産生されたTSP-1が前立腺間質細胞を増殖させることで、前立腺肥大症を誘導する可能性が示唆された。
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