研究課題/領域番号 |
24791668
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
石田 勝 慶應義塾大学, 医学部, 研究員 (80383876)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 腎細胞癌 / 芳香族炭化水素受容体 / 発癌 / 浸潤 |
研究概要 |
腫瘍免疫を担うリンパ球におけるAhRの発現についての検討はこれまでになされていない。そこで本研究では、腎細胞癌組織のAhRの発現を免疫組織化学的に調べ、リンパ球ごとにAhRの発現を評価し各細胞の機能とAhRの発現との関連を明らかした。腎細胞癌外科切除検体の切片を、各種細胞表面マーカーの抗体を用いて免疫組織化学染色を行った。細胞表面マーカーは、Foxp3、L26、CD3、CD4、CD8を使用した。外科的切除後に再発を認めずに生存している症例(good prognosis)と腎細胞癌死症例(poor prognosis)とを免疫組織学的に比較検討した。 ①AhR発現細胞とregulatory T細胞は癌死症例に多く認められ、特に腫瘍辺縁部でその傾向が強い②症例の予後にかかわらず、B細胞よりもT細胞が優位に認められ、特に腫瘍内部でその傾向が強い③癌死症例では、細胞傷害性T細胞と比較してhelper T細胞が優位に認められた、という知見が得られた。 制御性T細胞およびhelperT細胞のうちTh17細胞の分化にAhRが関与していることが報告されており(Quintana et al. Nature 453: 65-71, 2008)、本研究の結果からも腫瘍免疫においてAhRが何らかの役割を果たしている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
検討に用いた組織検体数が不十分なため、症例数を増やしてより信頼性の高い成果を得たほうが良いと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の研究で実施を予定しているセルソーターによるリンパ球サブセット回収など腫瘍免疫に関する実験設備および技術の習得は、当大学医学部先端医科学研究所の河上裕教授のグループの協力を得る。河上教授のグループは腫瘍免疫に関して多くの業績をあげており(Nat Med 4(3):321-327,1998、J Exp Med 203(7): 1651-1656, 2006、Cancer cell 15(3): 195-206, 2009など)本研究で予定している実験系はすでに確立されている。 また、サイトカインの測定に必要なELISAアッセイも当教室内の設備で施行可能である。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費は具体的には、免疫組織染色で用いる抗体、RNA抽出に用いる核酸抽出試薬、siRNA導入に必要なsiRNA配列およびリポフェクション試薬、フローサイトメトリーで用いる試薬、定量PCRに必要なプライマー、BD MatrigelTM Basement Membrane Matrix (BD Biosciences, San Jose, CA)、などの消耗品の購入に充てる予定である。 謝金としての経費は、研究成果を投稿する際の校閲に関する費用を予定している。 旅費に関しては、国際学会(American Urological Association Annual Meeting, European Association of Urology Cognressなど)、国内の学会(日本泌尿器科学会総会、日本癌学会学術総会、日本癌治療学会学術集会など)での発表にかかる経費を予定している。
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