研究課題/領域番号 |
24791673
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
平井 宗一 東京医科大学, 医学部, 講師 (70516054)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 精巣 / 動脈性虚血 / 静脈性鬱血 |
研究概要 |
血流障害には”動脈性虚血”と”静脈性鬱血”があり、異なる病態を示す。これまでにも精索捻転症モデルの解析などにより、精巣血流障害の解析が行われてきた。しかしながら、精巣における”動脈性虚血”と”静脈性鬱血”の病態を明確に分けて調査した報告はなかった。今回、精巣における動脈性虚血と静脈性鬱血の病態を比較検討した。本研究では、10週齡のラットを用いて精巣動脈(虚血群)と精巣静脈(鬱血群)の血流をそれぞれ2、4、6時間遮断した。その結果、虚血群の精巣は肉眼的に白くなったが、鬱血群の精巣は赤黒くなり腫脹した。再灌流して1時間後の肉眼像は、鬱血群と虚血群で大きな違いが観察されなかった。一方、組織学的評価により、血流を遮断して4時間および6時間の虚血群では鬱血群よりも精細管内の死細胞の数が増加することが明らかになった。また、再灌流3日後の精巣では、血流を遮断して4時間および6時間の虚血群には激しい精子形成障害が観察されたが、鬱血群の精子形成障害は軽度であった。これにより、動物モデル実験において、動脈性虚血を伴う精巣は肉眼的に白くなり、激しい精子形成障害が起こる一方、静脈性鬱血を伴う精巣は青黒く腫脹するが、精子形成障害の程度は軽いことが明らかとなった。本研究の結果により、精巣の血流障害において、肉眼所見は精子形成機能の予後を予測するための指標として不適切である可能性が示唆された。今後、”動脈性虚血”と”静脈性鬱血”による障害のメカニズムの違いを解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一般的に急性血流障害における流入動脈の遮断による“動脈性虚血“と灌流静脈の遮断による”静脈性鬱血“には異なる病態生じることが知られている。静脈性鬱血した腸管は虚血性虚血した腸管よりも肉眼的に青黒くなり、酸化ストレスが発生して障害の程度が悪化することが分かっている。また、皮膚においても静脈性鬱血の方が動脈性虚血よりも障害の程度が重いということが明らかになっている。精巣の血流障害を解析するための動物実験モデルには精索を捻転させるモデルと精巣動・静脈をクリップで遮断するモデルがあるが、”動脈性虚血”と”静脈性鬱血”を分けて比較検討した報告はなかった。今回の研究にて、精巣における”動脈性虚血”と”静脈性鬱血”を比較し、その違いを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度では、精巣における”動脈性虚血”と”静脈性鬱血”の違いを比較検討するモデルを確立した上で、その病態の違いを組織学的に明らかにした。平成25年度は、血流障害および再還流障害における”動脈性虚血”と”静脈性鬱血”の障害を誘導するメカニズムの違いについて詳しく解析する。これまでの報告により、再還流障害の重要な障害メカニズムであることが指摘されている、精巣内サイトカイン動態の違いや酸化ストレスの違いに注目し、”動脈性虚血”と”静脈性鬱血”の違いについて研究を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は総額800千円の研究経費を計上した。その積算根拠として、実験動物のためのラット代(食餌含)300千円を計上した。さらに、消耗品としてスライドグラス34千円、酸化ストレス解析用試薬180千円、抗原精製のための薬品類(二次元用電気泳動用、real time PCR用他)286千円を計上した。
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