研究課題
若手研究(B)
膀胱腫瘍は血中や尿中の有用なマーカーがなく、膀胱鏡検査や感度の低い尿細胞診に頼らざるを得ないことから、非侵襲的な早期診断や再発の早期発見が困難である。そこで、体液中で安定して存在するmicroRNAについて膀胱腫瘍での発現を網羅的解析することにより膀胱腫瘍の新規腫瘍マーカーを検索した。まずは、膀胱腫瘍の細胞株(RT-4,T-24)および腎移植ドナー尿管から剥離採取した尿路上皮からRNAを抽出した。RNA Integrity Number (RIN)を指標としてRNAの質を検定し、Agilent社microRNA microarray Version16.0にてマイクロアレイ解析を行なった。尿管20検体のうち、解析サンプルとして推奨されるRIN7以上であった6検体を正常対照群として、膀胱腫瘍細胞株のmicro RNA発現量を比較解析した。正常対照群の平均値と比較して、発現が2倍以上有意に亢進しているmicroRNAはRT-4で34種類、T-24で10種類であった。逆に発現が2倍以上有意に減少しているのはRT-4で158種類、T-24で169種類であった。これらのデータをもとに、膀胱腫瘍の尿中新規腫瘍マーカーが特定できる可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書の実験計画のうち、1) 細胞株を用いたmiRNAマイクロアレイ解析を行う。2) 候補miRNAの尿中スクリーニング:マーカー候補として抽出された遺伝子を標的とするmiRNAをデータベースより検索、予測し、膀胱腫瘍のマーカーとなるmiRNAを10個程度に絞り込む。3) 膀胱腫瘍患者のmiRNA収集:実際の臨床検体で候補miRNAを解析できように膀胱腫瘍患者の尿を取集し、miRNA抽出しておく。以上の3つの項目すべてを達成している。
候補miRNAの尿中腫瘍マーカーとしての有用性の検討:候補マーカーmiRNAとして予測されたmiRNAのうち10個程度について、膀胱腫瘍患者50例ならびに泌尿器系良性疾患患者50例の尿中における発現量をリアルタイムPCRにて定量し、個々のmiRNAについて膀胱腫瘍の検出感度・特異度を評価する。そして、単独あるいは複数のmiRNAを組み合わせて腫瘍患者と健常者を分類する評価基準を設定する。
・患者尿中miRNA抽出のためのキット5万円×2=10万円・リアルタイムPCR用試薬100検体分×10種類(RT用試薬、quantitative PCR用試薬)7万円×10=70万円・その他実験用器具 10万円
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Molecular Therapy
巻: Vol. 21 No.3 ページ: 610-619
10.1038/mt.2012.269