研究課題/領域番号 |
24791676
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
佐々木 秀郎 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (30386990)
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キーワード | 膀胱腫瘍 / micrp RNA / 腫瘍マーカー / 尿 |
研究概要 |
現在、膀胱腫瘍の診断法としては膀胱鏡検査や感度の低い尿細胞診に頼らざるを得ないことから、新規の非侵襲的な腫瘍マーカーの開発が急務である。そこで体液中で安定して存在するmicroRNAについて膀胱腫瘍細胞株での発現をmicroRNA microarrayを用いた網羅的解析により検討し、現在までに3種類の候補microRNAを見出した。 本年度は膀胱洗浄液を検体として用いたRT-qPCRによる検討を行った。健常対象者(健常群)9例、膀胱腫瘍患者(腫瘍群)20例の膀胱洗浄液よりRNAを抽出し、RT-qPCRを行った。3種類の候補microRNAのうち1種類はqPCRで半数ほどの検体しか増幅されなかったために今回の検討から除外した。発現量の比較検討にはcycle threshold(Ct)値を使用した。候補microRNA-AのCt値は腫瘍群で29.0±3.20(22.8―32.5)であり、健常群の35.8±6.75(34.4―36.7)に比較し有意に低値であった(P<0.0001)。候補microRNA-BのCt値も同様に、腫瘍群で30.1±4.13(23.3―38.6)であり、健常群の36.4±3.96(30.0―44.1)に比較し有意に低値であった。尿細胞診と各候補microRNAのCt値も有意に相関し、細胞診がclassIからVになるに従いCt値が低下した(microRNA-A : P=0.0005, microRNA-B : P=0.0920)。microRNA-Aにおいては健常群にカットオフラインを設定し腫瘍群と明確に区別することが可能であり、腫瘍マーカーとしての有用性が確認された。 今後、臨床検体を尿サンプルとして症例数をさらに増やしてスクリーニングを行い、候補microRNAが膀胱腫瘍の尿中新規腫瘍マーカーとなり得るかを検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
候補マーカーmiRNAとして予測されたmiRNA A,Bついて、膀胱腫瘍患者ならびに泌尿器系良性疾患患者の尿中における発現量をリアルタイムPCRにて定量し、個々のmiRNAについて膀胱腫瘍の検出感度・特異度を評価する。そして、単独あるいは複数のmiRNAを組み合わせて腫瘍患者と健常者を分類する評価基準を設定するという当初の計画はほぼ達成されている。
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今後の研究の推進方策 |
1. miRNA A,Bついて、膀胱腫瘍患者ならびに泌尿器系良性疾患患者、各100例の尿中における発現量をRT-qPCRにて定量し、スクリーニング法としての確立を目指す。 2.miRNAを用いたin vitroにおける遺伝子発現の制御実験:miRNA A,Bの過剰発現ベクターを膀胱腫瘍細胞株にトランスフェクションする。培養後にマーカー遺伝子のmiRNA及び遺伝子産物のタンパク質レベルをreal time PCR法ならびにwestern blottingにより検出し、膀胱腫瘍細胞において遺伝子発現を制御できるmiRNAを選定し、治療法としての可能性を検討する。
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