研究実績の概要 |
膀胱腫瘍は再発率が高く、診断のための非侵襲的なマーカーの開発が必須である。そこで尿中で安定して存在するmicroRNA (miR)に着目し、検討を行ってきた。 本年度はH25年までの検討で選定した膀胱腫瘍マーカー候補である2種類のmiR A,B(未発表のため仮称)について、臨床検体である自排尿を用いた検討を行った。良性疾患患者(健常群)19例、膀胱腫瘍患者(腫瘍群)19例の自排尿よりRNAを抽出し、RT-qPCRを行った。発現量の比較検討には目的のmiRのcycle threshold(Ct)値からhsa-miR-21-3pのCt値を引いた⊿Ct値を使用した。miR-Bは尿検体における発現が安定しておらず、検出不能の検体が3割以上を占めるためマーカーとしての有用性は低いと考え検討から除外した。miR-Aの⊿Ct値は腫瘍群で-2.2±4.6であり、健常群の-0.5±1.3に比較し有意に低値であった(P<0.01)。同症例の術前後での比較では、術前 (-4.1±5.1) に比較して術後 (-0.4±1.8) で有意に低下した (P=0.04)。また、尿細胞診陰性の膀胱癌でも、健常群に比較してその値は有意に低下し (-2.1±4.8, P=0.02)、尿細胞診陰性の癌症例を検出できる可能性が示唆された。更に発現量と病理組織学的所見との相関も認められ、low grade (0.03±2.31) に比較しhigh grade (-5.37±5.21) にて発現が亢進し (P<0.01)、表在性膀胱腫瘍 (-0.72±2.7) に比較し、深在性膀胱腫瘍 (-5.4±5.4) でその発現が有意に亢進していた (P=0.02)。以上より、miR-Aは膀胱腫瘍マーカーとしての有用性のみならず、組織学的悪性度の予測因子としての有用性も確認された。
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