研究課題/領域番号 |
24791678
|
研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
日野 敏昭 旭川医科大学, 医学部, 助教 (10550676)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 産婦人科学 / 混倍数性 / 着床前診断 / 第二極体 |
研究概要 |
本年度は、第二極体(PB2)における半数体ゲノムの安定性について検討するために、種々のステージにあるマウス受精卵のPB2を用いてDNA合成、アポトーシスの有無、早期染色体凝縮(PCC)法による染色体異常の有無を調査した。また、PCC誘導後のクロマチン形態によって、PB2における細胞周期のステージの判定も試みた。BrdUの取り込みを指標としたDNA合成の解析では、1細胞期受精卵のDNA合成は受精後12時間までに完了したが、PB2のそれは24時間まで及んでいた。TUNEL法とカスパーゼ法による解析では、アポトーシス陽性を示したPB2の割合は受精後72時間まで10%以下であった。受精後4-6時間の1細胞期受精卵から採取したPB2の染色体をPCC 法で分析したところ、ほぼ全ての染色体像はG1期像であり、染色体異常率は2.6%と低かった。一方、受精後24、48および72時間では90%以上がS期像を示した。そのため、染色体解析はできなかった。これらの研究結果に基づいて、PB2に由来する混倍数性受精卵の作製を試みた。不活化センダイウイルスを用いてPB2を2細胞期の初期および中期-後期の割球の1つと融合し、4細胞期になった時の各割球の核の形態と染色体を解析した。融合受精卵の90%以上が4細胞期へ発生した。2細胞期初期の融合では4細胞期受精卵の80%以上が正常形態の核をもっていた。また染色体分析によって、2倍体と3倍体の割球が混在した4細胞期受精卵も確認された。一方、2細胞期の中期-後期の融合では正常形態の核をもつ割球が顕著に低下した(27.5%)。以上の結果から、多くのPB2は受精後72時間までS期に留まっており、しかもアポトーシスを起こさずに生存していることが明らかとなった。またPB2は、受精卵の割球の1つに融合することにより混倍数性受精卵の形成に関与することが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度に予定していた検討項目である、PB2を用いた(1)DNA合成、(2)アポトーシスの有無、(3)PCC法による染色体異常の有無と細胞周期のステージ判定の調査はすべて終了し、「PB2ゲノムがいつまで安定か」という疑問に答えることができる研究成果を得ることができた。また、次年度の研究計画の一部である混倍数性受精卵の作製、ならびに分裂後の核の形態と染色体の解析も行った。以上の点から、申請者は、本研究は当初の計画以上に進展していると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度得られた研究成果をもとに、PB2に由来する混倍数性の生成機序の解明につながる基盤となる検討を引き続き行う。具体的には、以下の3つの検討を行う。 【実験1】PB2と割球の融合方法を検討するために、不活化センダイウイルス法と電気融合法におけるPB2と割球の融合率と作製した受精卵の体外培養成績を比較する。 【実験2】PB2に由来するゲノムの動きを追跡するために、融合によってできた3倍体細胞の分裂中期紡錘体を観察し、染色体が正常に赤道面に配列されるかどうかを観察する。 【実験3】全身性にGFPを発現するグリーンマウス由来の2PBを受精卵の割球の1つに融合し、混倍数性受精卵における三倍体細胞の可視化を試みる。さらに、作製した受精卵を胚盤胞期まで体外培養し、三倍体細胞の局在をGFP蛍光を指標に観察する。 また、本研究により得られた結果を取りまとめ、研究成果を学術誌に投稿し、国内外の学会にて発表する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
来年度は、1匹あたりの単価が高いグリーンマウスを使った実験が主体になるため、本年度に使用する予定だった研究費の一部を来年度に繰り越した。
|