研究課題/領域番号 |
24791679
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
丹野 純香 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (60509595)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 癌 / 子宮体癌 / 漿液性腺癌 / 分子標的治療 / MET |
研究概要 |
本年では、オンコジーンであるc-Met遺伝子が子宮体部漿液性腺癌(漿液性腺癌)においての発現と病理組織学的因子との相関を検証するとともに、漿液性腺癌培養細胞株でのsiRNAを用いたRNA干渉によるc-Met遺伝子の発現抑制による機能解析を目標にした。 ①漿液性腺癌組織検体でのc-Met遺伝子の検討:本年度では漿液性腺癌組織検体のリストアップを行い、臨床情報をまとめた。また、数検体をまず免疫化学染色を行いその評価をTissueFAXS細胞解析システム(TissueGnostics社)によって行った。その結果、c-Met発現は正常内膜組織(n=1)での陽性率は0.11%であったのに対し、漿液性腺癌組織(n=1)では79.80%と顕著に正常に比べ癌で発現が上昇していることが確認された。 ②培養細胞株を用いたcMet遺伝子ノックダウンによる機能解析:本年では、まずsiRNAを用いたRNAノックダウンを行うためsiRNAのデザインと、培養細胞株のsiRNAの導入条件の最適化を行った。siRNAはRNAi社のデータベースライブラリーから選択し合成を行った。さらにsiRNAが適切に培養細胞株に導入される条件を決定するためGAPDH遺伝子のポジティブcontrol-siRNAを用いて条件検討を行い、適正なsiRNA導入条件を見出すことができた。 以上より、症例数は少ないが漿液性腺癌組織においてc-Met遺伝子の発現は正常に比較して上昇することが確認できた。また、in vitroの検討するためのsiRNA実験を行うための漿液性腺癌培養細胞へのsiRNA導入条件を決めることができた。これらの結果は、漿液性腺癌研究においては初めての報告であり、今後の新しい治療法の開発につながる重要性の高い成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年までに、漿液性腺癌組織検体を用いたcMet遺伝子の評価の準備と少数の組織検体を用いた免疫組織化学染色での評価を行いc-Met遺伝子が正常に比較し発現上昇することを見出した。また、今後in vitroでのc-Met遺伝子の機能解析を行うためにsiRNAの漿液性腺癌培養細胞におけるsiRNA導入条件の最適化を行い適正な条件を見出すことができ。このことより、来年度から癌組織検体の評価とcMet遺伝子のIn vitroレベルでの機能解析を直ちに解析できる条件が整ったと考えられる。以上より本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、臨床検体および培養細胞株また動物実験を用いて総合的に漿液性腺癌におけるc-Met遺伝子の機能について検証を目的とし、c-Met遺伝子を標的とした治療応用を目指す。次年度からは臨床検体のc-Met遺伝子の発現と病理組織学的因子との相関を検討することを予定している。また細胞株を用いた解析として、c-Met遺伝子のsiRNAを用いたノックダウンによる機能解析(細胞増殖、遊走能・浸潤能、アポトーシス活性、細胞周期、足場非依存的増殖能など)を行い、得られた機能をc-Met阻害剤によって抑制できるか検証する。また、このc-Met阻害剤の癌抑制効果をより生体内に近いin vivoレベルで再現できるか動物実験で検討する。 以上の項目について、いくつかの実験系を同時に検討することによってさらなる結果の推進を計る。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額と合わせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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