研究概要 |
Wilms’ tumor 1 (WT1)遺伝子はRNA splicingを受けexon5 (17AA)とexon9,10間の3つのamino acids (KTS)の有無によって4つのisoformがある。昨年度までの我々の研究結果より、WT1 isoform A (-17AA/-KTS)をWT1未発現である卵巣癌細胞株SKOV3細胞に、レンチウイルスベクターを用いて過剰発現させることで、腹水・腫瘍産生量共にコントロールと比較して、有意な増加を認めることが分かった。今年度はWT1 isoformがマウスの生存に与える影響とWT1 isoform Aによって腹水・腫瘍産生量が増加するメカニズムについて検討を行った。 SKOV3細胞に、4つの各isoform (17AA-/KTS-, 17AA+/KTS-, 17AA-/KTS+, 17AA+/KTS+)を過剰発現させた細胞株を樹立した。コントロールは空ベクターを導入した細胞株とした。5つの細胞株を4~6週令のメスヌードマウスに接種し、Kaplan-Meier法を用いて生存曲線を算出した。コントロール導入細胞を接種したマウスに比較して、WT1 isoform A過剰発現細胞を接種したマウスで有意な全生存期間の短縮を認めた。他のisoformを接種したマウスはコントロールと比較して有意差を認めなかった。 WT1が発現調節を行う遺伝子の一つとしてVEGF (vascular endothelial growth factor)がある。WT1 isoform A過剰発現細胞から形成された腫瘍とコントロール導入細胞より形成された腫瘍におけるVEGFの発現をimmunoblot法で検討したところ、WT1 isoform Aによりコントロールと比較してVEGFの発現が増強していた。さらに血管新生について血管内皮マーカーであるCD31抗体を用いて免疫染色法で検討したところ、コントロールに比較してWT1 isoform Aにより血管新生が増強した。
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