本年は、前年度に確立したマウス前胞状卵胞体外培養系を用いていくつかの実験を行った。まず、アディポサイトカインの一つであるTNF-αによる卵胞発育、ステロイド産生抑制系に対し、フィブラート系脂質異常症改善薬であるベザフィブレートが与える影響について検討した。ベザフィブレートはTNF-αによる卵胞発育、ステロイド産生の抑制を有意に改善した。さらに、TNF-αによる抑制系に、ベザフィブレートとともにPPAR-γ antagonistを添加したところ、ベザフィブレートによる改善効果を抑制した。以上よりベザフィブレートはPPAR-γを介してTNF-αによる卵胞発育、ステロイド産生の抑制作用を改善することが示唆された。 同様にチアゾリジン系薬であり、PPAR-γ作動薬でもあるピオグリタゾンを使用し、PPAR-γ作動薬の卵胞発育に対する直接効果を調べた。ピオグリタゾンもベザフィブレートと同様、TNF-αによる卵胞発育、ステロイド産生の抑制を有意に改善した。 TNF-αなどのアディポサイトカインは、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の卵胞発育障害に関与していると考えられている。本研究はPCOSに対するベザフィブレートやピオグリタゾンなどのPPAR-γ作動薬の卵胞への直接作用を証明するものであり、今後臨床の場でも役立つと考えられる。 以上の結果をまとめ、Journal of ovarian research誌に投稿した。
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