研究課題/領域番号 |
24791682
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
越智 寛幸 筑波大学, 医学医療系, 講師 (90574145)
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キーワード | ヒトパピローマウイルス / 血清疫学 / 子宮頸癌 / 子宮頸部前癌病変 |
研究概要 |
ヒトパピローマウイルス(HPV)感染の実態を血清疫学的方法によって明らかにし、HPV感染予防ワクチンによる子宮頸癌発症予防をより効果的なものとするための基礎データを蓄積すること。また、子宮頸癌前癌病変(CIN)患者の血清中和抗体の有無を調べることで、子宮頸癌発症の高リスク群を抽出し、効率的な管理方法を検討することを目的として研究を行っている。 HPV16 DNA陽性の前癌病変患者において、HPV16に対する血清中和抗体の有無が病変の消失や進展に関連するかを検討した結果、CIN1/2患者で2年以内に病変が自然消失する割合は中和抗体陽性者で低く、中和抗体陽性者で病変が存続しやすい傾向がみられた。またCIN3へ進展した6名はすべて中和抗体陽性であり、進展リスクに有意差を認めたことから、子宮頸部前癌病変患者ではHPVDNAの型判定に加えて、HPV血清中和抗体の有無を測定することで、CIN3への進展リスクの評価に役立つ可能性があることを明らかとなった。 Do neutralizing antibody responses generated by human papillomavirus infections favor a better outcome of low-grade cervical lesions? Journal of Medical Virology Vol. 84, 1128-34, 2012
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、文部科学省特定領域「HPVと発がんに関するコホート研究」研究班より提供をうけた血清サンプルの中和抗体の測定し、「HPV16 DNA 陽性の前癌病変患者ではHPVDNAの型判定に加えて、HPV血清中和抗体の有無を測定することで、CIN3への進展リスクの評価に役立つ」 可能性を明らかとし、研究結果を、Journal of Medical Virologにて報告してきた。この結果は、子宮頸癌前癌病変患者の血清中和抗体の有無を調べることで、子宮頸癌発症の高リスク群を抽出し、効率的な 管理に役立つ可能性があることを示すものであり、研究目的に沿うものであることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
文部科学省特定領域「HPVと発がんに関するコホート研究」研究班より血清サンプルの提供をうけて研究を開始した。これまで、”子宮頸部前癌病変患者ではHPVDNAの型判定に加えて、HPV血清中和抗体の有無を測定することで 、CIN3への進展リスクの評価に役立つ可能性がある”ことを16型HPV陽性者について報告してきた。現在16型だけでなく、その他のHPV型についても同様の結果が得られるかフォローアップデータを解析中である。コホート研究はすでに長期間にわたるフォローアップdataが蓄積されており、中和抗体価がその後の病変の存続・進展の予後を予知するマーカーとして使用可能か検討を深める予定である。 一方、現在HPV感染予防ワクチンの対象は女性に限られているが、HPVは性行為にて感染が広がるウイルスであり、最近では子宮頚癌以外の口腔や咽頭の癌においても関与が示唆されている。本邦男性におけるHPV感染実態についての報告はないことから、一般健常男女におけるヒトパピローマウイルス感染の実態調査について計画をすすめる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
顕微鏡(1台×800千円)や個人情報管理用コンピュータ(1台×100千円)は耐震工事による研究室の移動、ならびに最新式の機器の購入にむけて、昨年度は購入を控えた。 本年度は、購入機器を再度選定したうえで予算を執行する予定である。
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