研究課題
ヒトパピローマウイルス(HPV)感染の実態を血清疫学的方法によって明らかにし、HPV感染予防ワクチンによる子宮頸癌発症予防をより効果的なものとするための基礎データを蓄積すること。また、子宮頸癌前癌病変患者の血清中和抗体の有無を調べることで、子宮頸癌発症の高リスク群を抽出し、効率的な管理方法を検討することを目的として研究を行っている。HPV16/18/31/52/58型に対する血清中和抗体の有無が軽度前がん病変の消失/持続と関連するかどうかを検討した結果、LSIL患者においてHPV16/18/52/58型の各々に対する中和抗体陽性は病変持続との関連が見られた(P<0.05)。HPV31では中和抗体陽性者で病変の自然消失までの時間が長い傾向が見られたが、有意差はなかった。2年以内に病変が自然消失する割合は、5つの型全てに中和抗体陰性の患者では71.4%、いずれか一つの型のみに中和抗体陽性の患者では55.0%、複数の型に対して中和抗体陽性の患者では46.7%であり、中和抗体陽性になる型が多いほど、有意に病変が持続しやすく、HPV中和抗体の測定はCINの臨床経過 (自然消失・進展) を予知するための指標として有用であることが明らかとなった。複数の型に対して中和抗体陽性の患者では生涯性交パートナーの数やクラミジア トラコマチス抗体陽性者が有意に多く、フォロー開始から24ヶ月後のHPV検査で登録時とは異なる新しいHPVタイプが検出される割合も高い傾向にあった。複数の型に対して中和抗体陽性の患者ではsexual activityが高く、一部の患者ではHPV感染を繰り返すことによって細胞診異常が持続している可能性があると考えられた。
すべて 2015
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International Journal of Clinical Oncology
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10.1007/s10147-015-0789-4