研究概要 |
卵巣明細胞腺癌の発生に関与する遺伝子変異として近年注目されているがん抑制遺伝子ARID1Aをコードする蛋白のBAF250aは,卵巣明細胞腺癌の約半数に発現が低下することが報告されている.卵巣明細胞腺癌の発生過程はendometriosisが関連するほかに, adenofibromaの関与も考えられており,adenofibroma に関連した卵巣明細胞腺癌のBAF250a 発現を,endometriosisに関連した明細胞腺癌と比較検討した.2000年から2012年に手術を行った卵巣明細胞腺癌を対象とし,HE標本でcarcinomaの部位の他に,endometriosis,adenofibromaの有無を評価した.BAF250aの免疫化学組織染色をおこない,carcinoma,adenofibroma, endometriosisの部位の発現を評価した.Adenofibroma,endometriosisの部位はいずれもBAF250aの発現低下はみられなかった(0/80例, 0%).Carcinomaの部位におけるBAF250aの発現低下は,adenofibroma,endometriosis どちらも伴うのは8/18例 (44%),どちらも伴わないものは9/13例(69%),adefibromaのみ伴うのは6/17例(35%) ,endometriosisのみ伴うのは30/45(67%)であった.Adefibromaのみ伴う明細胞腺癌のBAF250aの発現低下は,endometriosisのみ伴うものに比べて有意に少なかった(p=0.026, Chi-Square test, Pearson).Adenofibroma に関連した明細胞腺癌は,endometriosisに関連した明細胞腺癌とは発癌機序が異なっている可能性が示唆された.
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