研究課題/領域番号 |
24791686
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
植原 貴史 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (70568659)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 婦人科腫瘍学 |
研究概要 |
平成24年度は、子宮体癌細胞株であるIshikawa細胞を用いてメトホルミンとシスプラチンの併用効果を研究した。 細胞増殖実験(①)については、Ishikawa細胞に対してメトホルミンおよびシスプラチンを用いて、細胞増殖抑制効果を検討した。メトホルミンおよびシスプラチンがそれぞれ単剤でIshikawa細胞の増殖を抑制し、これら2剤の併用では相加的にIshikawa細胞の増殖を抑制することを見出した。 続いてメトホルミンとシスプラチンによる細胞増殖抑制機序を調べるため、細胞周期変化(②)についてFlow cytometryで検討した。メトホルミンはG1 cell cycle arrestを引き起こす一方、シスプラチンはG2/M cell cycle arrestを引き起こした。アポトーシス(③)に関しては、Flow cytometryとカスパーゼ活性を調べることで検討した。Flow cytometryによる検討では、アポトーシスは生理的な濃度付近のメトホルミンでは濃度依存性の上昇を認めなかったが、シスプラチンでは上昇を認めた。しかしカスパーゼ活性を調べたところ、メトホルミンは同程度の濃度でも濃度依存性にカスパーゼ活性が上昇していた。これらから、細胞周期ではアポトーシスとして現れないものの、メトホルミンは濃度依存性にカスパーゼ活性を上昇させており、細胞死を引き起こすものと考えられた。 メトホルミンはミトコンドリアに作用することから、酸素濃度の影響を受ける可能性がある。In vivoへの移行を検討するため、低酸素状態(④)でメトホルミンの作用がどのようになるか検討した。低酸素培養条件では、通常酸素状態での培養に比べメトホルミンの作用が打ち消され、細胞増殖抑制効果が低下する結果となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究は、ほぼ計画通りに進行しており、順調と言える。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究結果から、低酸素状態では子宮体癌細胞の増殖抑制に対する抗がん薬とメトホルミンの併用効果が低下することが判明した。また、通常酸素状態で認められたメトホルミンによる細胞増殖抑制効果は、低酸素状態にあるin vivoでは認められない可能性が考慮された。平成25年度は従来の計画である、幹細胞を用いた研究やマウスでの研究を変更し、酸素状態や栄養状態がメトホルミンの作用に与える影響と機序を解明する方針を検討している。 メトホルミンの正確な機序には不明な点が多いものの、メトホルミンはミトコンドリアに作用することが知られている。この点を鑑みて、様々な酸素状態や栄養状態により、メトホルミンが細胞増殖シグナルやミトコンドリアに対してどのような影響を与えるかを研究する。メトホルミンは通常状態でAMPKを活性化することが知られるが、酸素状態や栄養状態を変化させた条件下で、これまでの報告と同様な結果となるか確認する。更に、様々な条件下で、メトホルミンがHIF-1αや他の細胞増殖シグナルにどのような影響を与えるか検討する。また、様々な条件下で、メトホルミンがミトコンドリアの作用にどのような影響を与えるかを、ミトコンドリアの活性を調べるなどして検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
細胞染色後の観察のための顕微鏡や分析のためのフローサイトメトリーなどの機器は学内のファシリティーに現存し、また細胞増殖シグナルの解析で遺伝子発現の検討する際のリアルタイムPCRなども研究室に現有するため、次年度の研究費は消耗品費用に充当する予定である。 なお、本年度は予定していた試薬を購入しなかったため未使用額が生じた。
|