平成25年度は、子宮体癌細胞株であるIshikawa細胞を用いて、メトホルミンとシスプラチンによる併用効果を検討した。 まず、メトホルミンやシスプラチンが細胞内での様々な細胞活性に与える影響について検討した。メトホルミンとシスプラチンがそれぞれ単独で細胞に与える影響を検討するのに、細胞増殖能を細胞数のカウントで、細胞酵素活性についてはテトラゾリウム塩を有する化合物による方法(MTT法)で、そしてDNA合成能は[3H]-サイミジン取り込み法で判定した。コントロールと比べると、シスプラチンおよび高濃度のメトホルミンでは、細胞あたりの酵素活性が高まりDNA合成能が低下していることが分かった。メトホルミンおよびシスプラチンを暴露した際の細胞径の変化を観察した。メトホルミンでは細胞径は縮小し、シスプラチンでは細胞径は増大していた。 次に、メトホルミンによるミトコンドリア変化を検討するためMito Tracker染色を施行した。メトホルミン暴露によりMito Tracker染色濃度は減弱した。メトホルミンにより細胞径が小さくなることから、Mito Tracker染色濃度の減弱が細胞径縮小によることが疑われた。そのため、メトホルミンを短時間暴露しMito Tracker染色を行ったところ、やはり染色濃度が減弱したため、細胞径縮小ではなくミトコンドリアに対する作用でMito Tracker染色が減弱したと考えられた。メトホルミン暴露後の細胞培養培地中の乳酸濃度を測定すると、メトホルミン濃度依存性に乳酸濃度が上昇していた。メトホルミンによりミトコンドリア障害から酸化的リン酸化が障害され乳酸発酵が増加したと考えられた。
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