研究課題
子宮内膜症は疼痛を主症状とする疾患であるが、その疼痛のメカニズムは未だ不明な点も多い。これまで子宮内膜症は炎症性疾患として捉えられている。特に、我々は向炎症性サイトカインであるIL-1β、TNF-αがシグナルカスケードであるMAPKを介して、種々のサイトカイン、ケモカインを誘導することで、病態の進展に寄与していることを示してきた。ブラジキニンは生体内でもっとも強い発痛物質である。我々は、IL-β、TNF-1α刺激を加えることで、培養子宮内膜症細胞にブラジキニン受容体( I型およびII型)が著明に誘導されることを見出した。また、培養子宮平滑筋細胞を用いた検討においても、子宮内膜症細胞と同様に、炎症性サイトカインがブラジキニン受容体の誘導を起こすことを見出した。即ち、子宮内膜症の病態に関与する炎症性刺激が、子宮内膜症病変および正常子宮筋層の細胞におけるブラジキニン受容体の発現を亢進させることで、子宮内膜症病変部および正常子宮での疼痛を誘導する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
職場の異動に伴い、新たな職場における実験系の立ち上げに時間を要している。
ブラジキニンが子宮内膜症の病態に及ぼす影響について検討を行う。我々は子宮内膜症における機能解析の実験系として、ヒト子宮内膜症細胞を用いたin vitroの実験系およびマウス子宮内膜症in vivoモデルを用いた系を確立している。具体的な計画としては、ヒト細胞を用いた実験:子宮内膜症において細胞の収縮は疼痛の原因および組織の固縮の誘導する。ブラジキニンの子宮筋細胞および子宮内膜症細胞の収縮作用について細胞のゲル収縮アッセイを用いて検討する。マウスを用いた実験:ドナーマウスから正常子宮内膜を摘出し、それをレシピエントマウスの腹腔内に投与することで子宮内膜症様病変を誘導することができる。その際、マウスの腹腔内にIL-6やMCP-1等の炎症サイトカインが誘導されることを見出している。投与する子宮内膜および子宮内膜症病変におけるブラジキニン受容体の発現レベルを比較検討することで、子宮内膜が子宮内膜症病変に変化することが、ブラジキニンシステムにどのような影響を与えるか検討する。
消耗品(特に薬剤の購入およびマウス)の購入に使用する予定である。
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