研究概要 |
卵巣では周期的に卵胞成熟が起こっており、この卵胞成熟は局所での炎症反応、低酸素状態等を伴うダイナミックな変化である。しかしながら、その機序については不明な点が多い。近年、小胞体ストレスが広く細胞の恒常性維持、或いは病態に深く関わることが明らかとなってきた。小胞体ストレスは、生理的、病理的環境下で種々の刺激により惹起されるため、卵胞成熟とも深く関わると想定される。本研究では、小胞体ストレスが生理的、病理的環境下での卵胞成熟の過程において担っている役割を明らかにし、臨床応用につなげたいと考えている。 初年度にあたる平成24年度は、まずマウス卵巣を用いて小胞体ストレス応答遺伝子発現の解析をする計画としていた。小胞体ストレスマーカーとして、小胞体ストレス応答遺伝子として代表的な、spliced XBP1(sXBP1)とHSPA5につき解析を進めた。sXBP1日齢の未熟C57BL6/J雌マウスにpregnant mare serum gonadotropin (PMSG) 5単位を腹腔内注射を3日連続して行ない、その48時間後に卵巣を回収し切片を作成した。In situ hybridization法によりmRNA発現を検討するために、マウスsXBP1, HSPA5配列よりPCR法を用いて約150塩基長のcDNA断片を作成し、T/Aクローニング、転写により、ジゴキシゲニンラベルしたantisense, sense RNAプローブを作成した。これを用い、sXBP1, HSPA5mRNAの発現を検討した。 sXBP1, HSPA5mRNAの発現を顆粒膜細胞に認めた。しかしその発現は卵胞の成熟期に応じており、一次卵胞、小二次卵胞には認めず、大二次卵胞、胞状卵胞、排卵期卵胞の卵丘細胞に認めた。この結果より小胞体ストレスが卵胞の成熟過程において役割を担うことが示唆された。
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