研究課題
卵巣では周期的に卵胞成熟が起こっているが、その機序については不明な点が多い。近年、小胞体ストレスが広く細胞の恒常性維持、或いは病態に関わることが明らかとなってきた。小胞体ストレスは、生理的、病理的環境下で種々の刺激により惹起されるため、卵胞成熟とも深く関わると想定される。本研究では、小胞体ストレスが卵胞成熟の過程において担っている役割を明らかにし、臨床応用につなげたいと考えている。平成24年度に、マウス卵巣を用いて小胞体ストレス応答遺伝子発現の解析を行ない、小胞体ストレス応答遺伝子spliced XBP1(sXBP1)とHSPA5が発育卵胞の顆粒膜細胞に発現しており、さらにその発現は卵胞の成熟期に応じていることを示した。平成25年度には、ヒト卵丘細胞における小胞体ストレス応答遺伝子発現量と卵子の質との関連の検討を計画していた。体外受精患者のうち顕微授精を施行する患者においては、採卵後個々の卵子周囲の卵丘細胞をヒアルロニダーゼを用いて除去し、顕微授精に供する。この際に得られる卵丘細胞を卵胞毎に分けて回収し、sXBP1, HSPA5mRNAの発現を定量的PCR法にて解析した。また各々の卵胞の内包していた卵子の成熟度、受精成立の有無を記録し、小胞体ストレス応答遺伝子発現量との関連を検討した。卵子の成熟度に関しては、Metaphase II (MII)卵で受精が成立したものを成熟卵子、それ以外(MII卵であったが受精不成立、MI卵、Germinal Vesicle (GV)卵)を未熟卵子と定義した。sXBP1mRNA発現は、成熟卵子周囲卵丘細胞において、未熟卵子周囲のものに比し約2倍増加していた。HSPA5に関しては有意差を認めなかった。マウス卵巣を用いた研究およびヒト卵丘細胞を用いた検討より、卵胞発育、卵子成熟過程において、小胞体ストレス応答が惹起され役割を担うことが示唆された。
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