研究課題/領域番号 |
24791695
|
研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
津吉 秀昭 福井大学, 医学部附属病院, 助教 (90593864)
|
キーワード | ジェノゲスト / 抗癌剤 / ラット / 卵巣機能保護 / 妊孕性 |
研究概要 |
ジエノゲストの卵巣保護作用を検証するために、研究実施計画に沿って以下の実験プロトコールに準じて行った。平成24年度には、①予備実験として卵巣毒性が強いcyclophosphamideを、ラットに一定期間投与することによって、卵胞数を有意に減少せしめる至適濃度と投与期間を検証し「癌化学療法ラットモデル」を作成した。②癌化学療法ラットモデルにジエノゲストを投与することで、原始卵胞プールの減少が阻止され、更に残存卵胞が(癌化学療法終了後に)発育・排卵し得ることを、これまでに卵巣保護作用を有する可能性が示唆されてきたGnRHアナログと比較検討することによって、生理学的・内分泌学的・病理組織学的に確認し、ジエノゲストが卵巣保護作用を有する可能性とその至適濃度を証明した。本年度は③癌化学療法モデルラットを交配させ、その出生仔を観察することにより、抗癌剤やジエノゲスト、GnRHアナログが次世代・次々世代の生殖に及ぼす影響を観察した。すなわち、妊娠ラットが生産・死産する割合、分娩時の出生仔数や出生時体重、新生仔の発育状況を、それぞれ観察するとともに、出生仔が性成熟した後に交配させ、その妊娠・出産状況を観察した。抗癌剤にジェノゲスト、GnRHアナログを併用することによって、コントロール郡には及ばないものの抗癌剤単独投与群と比較して明らかに妊孕性を保護することができ、更には次世代・次々世代の生殖には影響を及ぼさないことを証明した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度には、同年の研究実施計画であるジエノゲストの卵巣保護作用の証明において、癌化学療法ラットモデルへのジエノゲスト投与が、これまでに卵巣保護作用を有する可能性が示唆されてきたGnRHアナログと比較検討しても、同等の有効性を有する可能性を示唆する結果を得ることができた。本年度は、平成26年度の研究実施計画である抗癌剤やジエノゲスト、GnRHaの次世代・次々世代の生殖に及ぼす影響の証明において、コントロール郡には及ばないものの抗癌剤単独投与群と比較して明らかに妊孕性を保護することができ、更には次世代・次々世代の生殖には影響を及ぼさないことを証明できた。更に、平成25年度の研究実施であるジエノゲストの卵巣保護メカニズムを明らかにするべく、細胞レベルでの機序の解明を行っているところである。
|
今後の研究の推進方策 |
ラットを使用したin vivoにおけるジエノゲストの卵巣保護作用の証明について繰り返し検証を行うとともに、平成25年度の研究実施計画であるジエノゲストの卵巣保護メカニズムの解明を引き続き行っていく予定である。上記実験プロトコールの卵巣組織切片を用いて、組織培養あるいは細胞培養によってin vitroにおける卵巣保護作用の証明を行う。すなわち卵胞細胞のアポトーシス出現率(TUNEL法)や、Caspase-3・Bcl2・Baxなどアポトーシス関連蛋白の発現(Western blot法)を調べることにより、ジエノゲストの卵巣保護作用が卵胞細胞アポトーシスの抑制を介するのか否か、検証する。さらには、ジエノゲストの卵巣保護作用に、細胞生存やアポトーシス抑制に重要な役割を担うERK/MAPK経路やPI3K/Akt経路などの細胞内シグナル伝達系が関与しているか否か、検討する。またジエノゲストによる卵巣保護作用が、GnRHaと同様に視床下部-下垂体系の抑制を介した卵胞発育抑制なのか、それとも視床下部-下垂体系を介さない卵巣への直接作用に基づく卵胞発育抑制なのかを解明するために、種々の血中ホルモンを測定し、卵巣局所におけるFSH受容体・LH受体・エストロゲン受容体・プロゲステロン受容体の発現を免疫組織染色やin situ hybridization法を用いて検討する。さらにはラット卵胞培養系に抗癌剤やジエノゲストを添加し、ジエノゲストが卵胞レベルで直接効果を呈するか否か、検証する。
|