研究課題
卵巣明細胞腺がんにおける抗がん剤併用Glypican-3(GPC3)ペプチドワクチン療法症例の検討として、GPC3特異的CTLが誘導されたかどうか確認するために、ワクチン投与前後の末梢血単核球(PBMC)を用いたEx vivo IFN-γ ELISPOTアッセイを3症例について施行した。3症例中2例においてワクチン投与前に比べわずかではあるもののワクチン投与後でGPC3特異的CTLが末梢血中に増加していることが確認された。HLA-A24結合性GPC3ペプチドワクチン投与を行った卵巣明細胞腺がん患者のうち臨床的に有効であった進行再発症例1例を含む9例の余剰PBMCを用いて、HLA-A24拘束性GPC3ペプチド特異的CTLクローンの樹立を行った。PBMCをin vitroにてペプチド刺激培養後(ペプチド濃度・各種サイトカイン条件を設定)のGPC3-Dextramer陽性T細胞をsingle cell sortingする方法によって2例のPBMCから複数のCTLクローンを樹立することができた。樹立されたCTLクローンはいずれもGPC3ペプチド特異性が確認できたものの、高親和性なクローンはみられず十分な細胞傷害性を示すことができなかった。抗がん剤併用腫瘍抗原特異的細胞療法に関して、マウス卵巣がん細胞株ID8を米国より分与いただき、同細胞株のマウスMHC classI(H2DbおよびH-2Kb)発現確認およびIFN-γによりMHC classIの発現が増強されることを確認した。同細胞株がmGPC3をmRNAレベルで発現していないことを確認した後に、免疫療法の標的腫瘍抗原とするべくmGPC3強制発現株を樹立した。
3: やや遅れている
初回治療後の残存腫瘍に対してSecond-line化学療法を予定されている非寛解群へのGPC3ワクチン療法併用症例がこれまでに4例と少数であり、1年以上にわたりstable diseaseを継続できている有効症例1例が得られてはいるもののGPC3ペプチドワクチン療法における至適併用抗がん剤の種類や投与量といった臨床的評価は遅れている。HLA-A2拘束性GPC3ペプチド特異的CTLクローンが度重なるexpansionの影響により増殖不良に陥り、必要十分な細胞数を計画的に確保できない状況となっている。そのため、HLA-A2陽性およびGPC3陽性である卵巣明細胞腺がんの腹膜播種マウスモデル(ヌードマウス)に対するHLA-A2拘束性GPC3ペプチド特異的CTLクローンを用いた細胞療法単独療法および抗がん剤併用療法の検討について支障が生じている。代案として腹膜播種モデルとして使用が可能であるマウス卵巣がん細胞株ID8について、腫瘍抗原特異的細胞療法およびワクチン療法の検討を行なうための予備検討を進めている。同様の理由によりHLA-A2拘束性GPC3ペプチド特異的CTLクローンが、軽度の増殖抑制はおこすもののアポトーシスはきたさない程度のsubtoxicな抗がん剤用量であっても前治療を併用することでCTLによる細胞傷害効果の上乗せがみられる機序についての解析も遅れている。これまでの検討ではsubtoxic用量によって標的がん細胞のGPC3やHLA classIおよびマンノース-6リン酸化レセプターの有意な発現上昇は認められなかったため、別の作用機序についてさらなる検討を要すると考えられた。
抗がん剤併用GPC3ワクチン療法症例については引き続き、Ex vivo IFN-γ ELISPOTアッセイを用いた免疫学的モニタリングを行う。1年以上stable diseaseの効果が得られている1症例については、さらに経時的にPBMCを蓄積し免疫学的モニタリングを行うとともに抗がん剤投与量との関係を中心に検討する。また余剰PBMCを用いて、ワクチン投与前後における免疫担当細胞(腫瘍関連マクロファージ、抑制性ミエロイド細胞、Th1/Th2バランスおよび制御性T細胞など)の表面抗原解析をフローサイトメトリーにて行う。HLA-A24拘束性GPC3ペプチド特異的CTLクローンの樹立については、GPC3ペプチドに対してより高親和性であるCTLクローンを樹立するため負荷するペプチド濃度やサイトカイン(IL-2, IL-15など)濃度を変更した条件設定で行う。抗がん剤併用GPC3特異的細胞療法については、マウス卵巣がん細胞株ID8を用いた腹膜播種モデルによる検討を進める。mGPC3遺伝子を導入し強制発現させたID8-mGPC3細胞株を樹立しており、同細胞株に対して卵巣がんに一般的に使用されることのある抗がん剤のin vitro効果(抗がん剤感受性や遊走・浸潤能)および腹膜播種モデルへの効果を評価する。また、mGPC3ペプチド特異的CTLラインの効率的な誘導方法・機能解析について検討した後にGPC3ペプチドワクチン併用療法・GPC3ペプチド特異的CTLラインによる細胞療法の効果を検討する。HLA-A2陽性およびGPC3陽性卵巣明細胞腺がんの腹膜播種マウスモデルに対するHLA-A2拘束性GPC3ペプチド特異的CTLクローンを用いた細胞療法についても残る親和性の異なるCTLクローンで可能な限り検討を行う。
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