研究課題
本年はカテプシンLに関して機能的な検討を行うことを目標とした。これまで、癒着胎盤症例において免疫染色を行った結果、カテプシンL発現はvilliにおいては明確な差を認めなかったがEVTでは癒着部分での発現亢進を示していた。In vitroの検討として、HTR-8細胞・BeWo細胞・JEG3細胞・Jar細胞においてはウエスタンブロットにてカテプシンLの発現を確認していたが、EVTのcell lineであるHchEpc1b細胞においても発現を確認した。HTR-8細胞にリポフェクトアミン法にてsiRNA導入を試みたがカテプシンL発現は約13%の低下を示したのみであった。HchEpc1b細胞においても同様にsiRNA導入したが発現抑制は20%強であった。HTR8に対しエレクトロポレーション法にて遺伝子発現抑制を試みたところ、約30%の抑制を示すにとどまった。妊婦血清中カテプシンLの正常曲線コントロール作成のため、妊娠初期(8―12週)、妊娠中期(20―28週)、妊娠後期(35―37週)にて検体を収集した。また同時に3次救急施設における癒着胎盤症例の臨床データを収集、解析した。癒着胎盤発症の母体となる帝王切開既往のある前置胎盤98例においてその発症リスクを検討したところ、既往妊娠3回以上、全前置胎盤、前壁付着胎盤、前回帝王切開時の子宮内膜側の連続縫合が独立因子として抽出された。従来より血清マーカーとして報告されているAFPに関しては有用性は認められなかった。(Sumigama et al. BJOG 2014)。
3: やや遅れている
24年度にマイクロアレイを行い、多数の発現亢進遺伝子(ADAM8、カテプシンL、カテプシンS、MMP19、ADAM28)から免疫染色によりカテプシンLを候補遺伝子として抽出し、25年度のin vitroでの機能研究を進める予定であったが、EVTの細胞株HTR-8、HchEpc1bでsiRNA導入による発現抑制が20ー30%程度と期待どおりにいかず、また絨毛癌細胞株であるBeWo細胞、JEG3細胞を用いても導入できなかった。
細胞株へのsiRNA導入がリホフェクトア ミン法、エレクトロホレーション法とも困難であった。本年はカテプシンLの強制発現により機能実験を行う予定である。HTR-8あるいはHchEpc1bにカテプシンLベクターを導入し1、Realtime RT-PCR/Western blot:siRNA導入によるRNA/タンハク発現の変化をmock株と比較。2、増殖能の検討:HTR-8/SVneo細胞・初期培養絨毛細胞を96穴フレートに培養、強制発現株とmock株について細胞増殖能の変化をMTS assayにて比較する。3、遊走能/浸潤能の検討: Migration/Invasion chamberを用い、上層に強制発現株とmock株をそれそれ播種し、遊走能/浸潤 能の変化につき検討する。強制発現株において遊走能/浸潤能が増加することが期待される。妊婦血清中カテフシンL濃度に関して、正常妊娠例(初期・中期・後期)で収集した検体により正常曲線を作成。前置胎盤症例において、分娩前の血清カテプシンL値をMoMで比較し、癒着発症の予知因子としての有用性を検討する。
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BJOG
巻: 121 ページ: 866-874
10.1111/1471-0528.12717
産婦人科の実際
巻: 62 ページ: 719-724