研究課題
これまでの経過から本年は臨床検体の症例数を増やすことに注力した。癒着胎盤23症例において、病理検体の免疫染色から染色強度をスコアリング(0-3)し同一症例内の非癒着部と癒着部における各マーカーの発現強度を比較した。それぞれ(非癒着部)vs(癒着部)の中央値(最小-最大)(以下同)の比較においてADAM28:0(0-1)vs0(0-1)、MMP19:2(1-3)vs2(1-3)、cathepsin S:0(0-2)vs0(0-2)と有意差を認めなかった。cathepsin Lは胎盤絨毛、EVTが染色され、共に非癒着部に比べ癒着部で濃く染色された。スコアリングでは(非癒着部)vs(癒着部)の中央値(最小-最大)=2(1-3)vs3(1-3)であり統計学的に有意差を認めた。癒着胎盤の血清マーカーとしてこれまで報告されているAFP、βHCGについて、前置非癒着胎盤と前置癒着胎盤において血清濃度を比較するとAFP(ng/ml):313±122 vs 317±112でP値0.91 、HCG(x10^4 IU/L):3.66±2.53 vs 2.96±1.83でP値0.34とともに差を認めずマーカーとしての意義を確認できなかったが、ELISAにより血清cathepsin L濃度を定量し正常妊娠、前置非癒着胎盤、前置癒着胎盤で比較したところそれぞれ中央値(四分位範囲)(ng/ml)は正常妊娠:6.23(3.85-7.92)、前置非癒着胎盤:6.37(4.44-9.23)、前置癒着胎盤:10.89(7.54-14.05)であり、癒着胎盤で有意に高値を示した(vs正常妊娠:P<0.01、vs前置非癒着胎盤:P<0.05)。以上より癒着胎盤の絨毛浸潤にcathepsin Lの関与が示唆され、また血清中の疾患特異的分子マーカーとしての可能性が示された。
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すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)